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ひもろぎ逍遥

2020年 01月 16日 ( 1 )

ウーナⅡ6 風読みのベガ あやかしのアシス(アズール)


2017年6月11日

アリナとカリナの合わせ鏡と同じ話をしていたのがススムだった。何故、面識の無い者たちが同じ話をするのか。前回から一月半経ったこの日、ススムから魂のカケラを取り出すことになった。

男が出て来た。
咳をし、手を叩き、怒り、床を削り、泣いたあげく、笑い出した。そして挑戦的に言った。
「謎は解かせん」

菊如は淡々と尋ねた。
「どなたでしょうか」
「私のことか…あだ名はアシスだ」

「謎は解かせん、とはどういう意味ですか」
「我は共に船に乗り込んだ。この船は着かせぬ」

「どうしてですか」
「イメラの船は着かせるわけにはいかん」

「イメラとはスメラのことですか?あなた方はイメラと呼び、我々はスメラと呼んだのですか?あなたの言葉は聞き取りにくいですね」
そう言うと、菊如は言語変換の真言を唱えた。アシスの言葉はクリアな日本語になった。

そして菊如は尋ねた。
「もう一つ、行っておきますが。後ろに従えているのは何ですか」
「そこまで見えるのか」
驚いたアシスは観念したように話し出した。「我々はエジプトから追って来た」

「あなたは人間ではありませんね」
「事の始まりはエジプト。シュメールより迎えた姫を強奪し、この国を目指し…」

「この国とは何処?」
「シナイ山だ。シナイ山を目指し、渡航したそなたら。
我らエジプトの神・スィーヴァ―の命令にて、ガードゥ一族を追いかけてきた。

この地にてベガの体に入り込み、操った。心優しきベガ。我らの話を聞き取り、我らの思いを身に受けた。我々は立ち居振る舞いも操った。
ベガの船は反乱を起こし、ガードゥを捨てた。

心優しいベガ。危険な目に合わせれば人の思いなんぞ、たやすく変わるものだ」


ウーナを救ってエジプトを出た二艘の船のうち、ベガはガードゥとは違う船に乗り込んでいた。ベガは風読みの一族の娘で、優れた航海士だった。

アシスは人間ではなかった。エジプトの神・シ―ヴァの命令でガードゥたちを追いかけ、ベガの弱いメンタルに付け込んで意識を乗っ取り、操ってガードゥに対して反乱を起こさせたというのだ。

アシスは「謎は解かせぬ」と言いながら、謎をペラペラと話した。そして、話を続けた。
「信頼?裏切られたのはベガだ。裏切られたのではない。裏切ったのはお前だ。
目的を果たさせる訳にはいかない」

「何故?」
「シ―ヴァの命令だ。シナイ山に新しい神が降りてくることを、シ―ヴァは許さぬ」

菊如は逆にアシスを脅し始めた。
「あなたは話してない話がある。言いたくない話があるでしょ。ここまで話していて話さないなら、消滅しかないですよ。
この問題を解決して新しい道に行かれた方がいいと思いますけど」

アシスへの脅しが効いたようだ。アシスはやや穏やかになった。
「この世の秩序を壊すな」

「秩序とはどういうものですか?」
「この国は消滅する。日本は消滅することに決まっておる。これが秩序だ」

「どうして?」
「この国の情勢を見ろ。四方を囲まれている。
あがくでない。
今さら、ガードゥを復活させてどうなる。封じ込められた魂を。
あがくな。
そなたらの神に何が出来よう。
すべてを我に話させて。
分かっておるか。そなたらの八百万神、それに何が出来る。

また、一からやり直す?
眠った魂を呼び起こす?
この国を縫い直す?固め直す?
気の遠い話よ」

アシスは嘲笑しながらも、ペラペラと話した。ここまで話されると、かえって罠があるのではないかと思う程だった。

このあと、アシスは急に親密な態度になり、菊如を教え諭そうとした。しかし、菊如はそれには乗らず、アシスの狙いを追求した。

「あなたたちは目的に達するには、人間に入り込み、表裏一体になり、バランスを崩すというのですね。操るのではなく、バランスを保てなくする。天上と闇の関係を地球上で表現しようとしているのですか」

「我らのしたい事はただ一つ。神などおらぬということ。
もともとこの国には神などいなかった。よそから連れてきて、名を変え、元からいた事とし、この国を優れた国とする。
おぞましい。
我らより、人間の方がおぞましいよのう」

「あなたは何をしたいのですか」
「我は命(めい)の通りに動くだけだ」

この後、アシスは自分の話に引き込もうとしたが、菊如は相手にせず、アシスの恐れる者の名を出した。そして、アシスの陥る運命を説明し始めた。すると、アシスはその話をやめさせようとした。
「やめろ。
教えるからやめろ。
われの脳内に入るでない。我々の計画を知る必要はない。そなたが知りたいのは、何でこんな事をしているかだろ。

要は、そなたら人間がして来た事、その最後のチャンスに邪魔が入るということだ。
シナイ山に神が降りる。
ガードゥ族が12名揃うとシナイ山に神が降りる」

「ベガはその一人だったのですね。船の中で何をしていたのですか」
「ベガは方向を読み、風を読み、帆を操っていた」

「霊的に何が起こったのですか」
「我らが途中でベガに入り込んだ。ベガはこの地には着かず」

「なぜ」
「我らに操られた事を知らず、方向を混乱に導き、ベガは裏切ったとされ、自ら海に身を投げた。
かわいそうなベガ。

風は読めなくなったが、星、月を読む者はいる。いろんな事柄を総合して判断していた。あの頃はな」

――アシス。自分がベガを死に追いやって「かわいそう」とは、とんでもない事を言う者だ。そして、答えをペラペラ話す。私は疑問だらけになった。

一区切りするとて、菊如は私の方を向いて、質問がないか聞いた。私はこの意識体の名前を最初に聞いていることをすっかり忘れて、また尋ねてしまった。
「お名前は何ですか?」

すると、アシスはこちらを向いてはっきりと答えた。
「アズール」
と。これを聞いたとたん、さっき名前を聞いていたことを思い出した。

「あれ?さっきと違う」
あわててノートを見直すと、私の目の片隅にアシスが横を向いてペロリと舌を出すのが見えた。ノートには「あだ名はアシス」と書いていた。あれは、あだ名だった。うっかり聞いた結果、アシスの名はアズールということが分かった。

このあと、菊如とアシスの間には再び問答が続いたが、私の中の拒否反応はだんだん大きくなっていった。話を書き止めながらも、心に蓋をする自分がいた。

この話を書くか書かないか、何者からも強要されていない。しかし、書くことにした。何故なら、この鞍手という町に問題が起こったという話を星読が伝えてきたからだ。ひと月前になろうか。

鞍手に起こった問題は二つあった。一つは、鷹ノ口おだ山の売却が決まったということ。そして、もう一つは鞍手病院が存亡の危機に陥っているということだった。

病院の方は地元の新聞で毎日のように取り沙汰されているという。そここそ、七色が「ひめこそ」という言葉を聴いた所だった。

そして、鷹ノ口おだ山は私が夢で見た所だった。それは「脇巫女」の始まりの地だった。私は書きかけの「ひめちゃご」の完成を優先した。書き終えた今、この先、何が起こるのか分からない話をこうして書き出した。

<20200116>






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by lunabura | 2020-01-16 19:27 | 「ウーナⅡ」 | Comments(0)

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