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ひもろぎ逍遥

2020年 01月 28日 ( 1 )

ウーナⅡ14 ルナーダ 月読みの航海士

ガードゥの船に乗った人の候補としてリエが挙がった。

菊如はリエの胸の魂のカケラを崋山の第三の目に入れた。

崋山の右手が振動し始めた。両手を挙げると何かが乗り、それを床に置いた。
顔を上げると若い女の姿になった。

その女は自ら語り出した。

「水面に映る月。これで暦が分かります。
今は秋。秋は風が強い月。私たちが行くのは東。
東に朝日が昇ったら、3,4,2の方向に舵を回してください。
そちらに行けば我らが目指すクラ―ジュの場所にまいります」
女は方向を指し示しながら言った。

菊如は船乗りになって「そうしましょう」と応じた。

女は手を胸に当て、苦しそうに咳をした。
「私はまだクラ―ジュに行くまでに、皆に方向を示す役目があります。
大丈夫。心配しなくて大丈夫」
自らを励まし、顔を上げると左手に乗せた水晶を掲げた。
「大丈夫。
私の命はまだまだあの地を目指すまで、大丈夫。   
風が凪(な)いできましたね。
夜が明けたら帆をたたむように。真ん中だけたたみ、一つ、三つ目は傾けますよ」
と、船乗りたちに指示をした。

余りに弱弱しいので、菊如が声をかけた。
「お身体は大丈夫ですか」

「私にはあの地に着き、月の巫女としての役目があります。
大丈夫…、大丈夫…。
どうかこの命が、クラ―ジュの地にこの身が届くように。
この水晶に私の月を照らします。
我が名はルナーダ。
私の胸をわずらわすものが…、蛾のようなものが…」

蛾がルナーダの胸をむしばんでいた。あのガジュと同じ、頭の無い蛾だった。
菊如は「それを出しましょう」と言うと、ルナーダの胸に手を当てようとした。

するとルナーダは他の者に変化し、その右手で菊如の手を掴んだ。笑いながら。

菊如は尋ねた。
「あなたは誰ですか」
「クククク」

「蛾はあなたですか。何ゆえにルナーダに掛かったのですか」
「ルナーダは優しい子。ルナーダは優しくて寂しい子。
いつも月を見て泣いてる。月は二つ」

「二つ?二つとは?」
「ルナーダは双子の子。片割れを失くした、悲しい子。
水面に映る月を見ては自分の兄を思い出す。クククク」

「兄とは?」
「ん~~~。ククククク。ん~~~~♪ククククク」

「兄とは?」
「兄の名はルナシオン。片割れとなって」左手に何かを乗せて示した。「ほらほら、ルナシオンだ。兄を取り戻したいか。そなたには見えないか」

菊如は答えた。
「見えない!」

魔は構わずに語り続けた。
「ルナシオンとルナーダは双子の兄妹。ルナシオンを失ったルナーダは船に乗り、生きるすべも楽しみも失った。その力を買われて船に乗った。

月とおしゃべりする。そのような力を我らが見過ごすわけがなかろう。ルナーダは我らの子」
そう言いながら左手のものを口に入れた。

菊如は言った。
「それちょっと違うね。嘘の話。
ルナシオンとケイロンはどのような繋がり?
ルナーダとケイロンはどのような繋がり?」
「ケイローン?ケイローンの始まりはルナシオン」

「そうよね」
「ああ。ルナーダを背中に載せたルナシオン」

「顔どうしました?ルナーダに手を出せないのは分かります。
ケイローンとは時代が違います」

魔は菊如を睨みつけた。両手を広げ、壁に背を当て、両手をすぼめると、「やめろ、やめろ、やめろ」と絶叫して去った。

次の瞬間ルナーダが戻ってきた。

ルナーダは両手を突き出した。
「私もそこに。そこに私も~。私も~。私も共に~」
と叫ぶ。

菊如はなだめた。
「まだ駄目よ。することがあるから」
「私も、私も。お願い。消えないで。天の月には戻れなくてもいい。海に映る月には…、もうここには…」

何が起こったのか。いくつもの次元が重なり合って出て来た。

あとで聞くと、月の女神アルテミスにはルナシオンとルナーダという兄妹が仕えていた。しかし、兄妹はいつしか契りを結んでしまい、アルテミスの怒りを買って、天界から追放されたという。

そのルナーダが人間に生まれ変わった。名もルナーダだった。月を見て暦を読み、風を読む航海士としてガードゥの船に乗った

一方、ルナシオンにはケイローンという半人半馬が守護神としてついた。
また、ルナシオンはギムロに生まれ変わり、ガードゥに拾われて船に乗った。しかし、二人は互いに気づいていないようだった。


菊如はルナーダに尋ねた。
「月の女神アルテミスの天使と関係ある?堕ちたから、月の女神の元に戻りたくない?」
すると、ルナーダは答えた。
「アルテミスのそばにいた記憶はありません。
月を見て、月と語らい、ルナシオンがいつも私を守っています。
月は暦が分かります。
アルテミスのそばから堕ちたかどうかは分かりません」
航海士のルナーダは天の記憶は失っていた。

菊如は諭した。
「あなたたちは兄妹です。兄妹で愛し合ってはいけません」
「分かりました」

「二人とも堕とされました。現世は神の御慈悲で兄妹としては生まれずにいます。しかし、離れ離れになりました」

月の女神に仕えたルナシオンとルナーダの兄妹は、航海士ルナーダとギムロとして生まれ変わった。そして、現世で再び同時代に生まれ変わった。神の慈悲で今回は他人として生まれたが、別々の人生を送ることになった。

「一回戻しますね。もう一人いるから。
アルシオンを召還できますよ。データーはあるから」
と言って菊如はリエにカケラを戻した。



<20200128>



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ウーナⅡ14 ルナーダ 月読みの航海士_c0222861_15441632.jpg

by lunabura | 2020-01-28 22:08 | 「ウーナⅡ」 | Comments(0)

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