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カテゴリ:「ワダツミ」( 29 )

ワダツミ29 クグマ 豊玉姫とヌタ



 ワダツミ29
  
クグマ 豊玉姫とヌタ

 
  
 
アリサが豊玉姫だとしたら、話を聞こう、
ということになったが、アリサからそのカケラを抜くと、
沢山の蛇の呪が掛かっていた。

その呪は含み笑いをし、ガラガラ蛇のように音を立てて話にならない。

それはこの物語の始まりの日、2017年10月10日、
岡垣の大国主神社の境内にいた小さなヘビだった。

菊如はそのへびに声を掛けた。
「こんばんは。大国主神社で会いました」
「あれは我が子の一部」

ヘビが子を沢山産んでいてそれが豊玉姫の呪となっていた。

「どういうことです」
「何故、そなたに話さねばならぬ」
剣もほろろだ。
確かに、話さねばならない義務は無いのだが。
これでは取り付く島もない。

すると、その直後、崋山に別の存在がかかった。

背中が曲がり、両腕をだらんと下げた年寄りの男だった。
ゼイゼイと息をし、座るのもやっとという重病人だった。

「何族ですか?」
「われらの一族のことか?我らはクグマ」

「クグマとは?かなりお年を召していますね。きついでしょ。
ノウマクシッチシッチ… 水を上げて」
菊如は答えを聞く前にその男に水を飲ませ、真言で癒した。

男は絞り出すような声だ。
背を丸めて何とか座っている。
咳を激しくすると、菊如は背中をさすってやった。

「何処から来られたんですか?さあ、吸って吐いて、吸って吐いて」
菊如が癒すと男は少しずつ話せるようになった。

「どうして、そう体が悪いのです?」
「何が聞きたいのだ」

「どうして大国主神社におられたんですか」
「あそこはもともとワシの物じゃ」

「クグマさん、何処から来られたんですか」
「海を渡って来た」

「どの国ですか」
と尋ねるが時代が違うので答えようがない。菊如は
「今で言う国の名が口からつい出てしまう」
と文殊菩薩の真言を唱えると、世界地図を見せた。
もちろん肉眼では見えない地図だ。

「人指し指でこの地図の何処かを指して」と言うと、
男は「我、インドの熱き国から来た。南の方から」と答えた。

「最初に広げていったのはあなた方?」
「黒い目の奴らが大勢であのあたり一帯を欲しがったが、分からん。
あの辺りは金が採れる」
男は水銀毒にやられていたのだ!

「それで体が悪い」
「あのあたりは金が採れるから、いろんなやつらがあの土地を狙いに来た」


「その時、豊玉姫が来られたの?」
「ああ。お付きの者も付けずに二人で来た」

「どなたと?」
「男の名前か?
男の名前はヌタと聞こえた。
お団子を一つにまとめた髪の男だ。
布を頭に被って女が後から来た。顔が見えなかった。
わしらには何も言わないが、分かった。
あれが海の女だと」

「なんで分かったのですか」
「ヌタがワシ等に言った。舟を一艘出してくれと」

「二人だけ?」
「女は薄いピンクのひらひらと、今で言う、襦袢のようなひらひらなのを着ていた。顔は見えん。二人で舟を出してくれと。これで」

「これって?」
「それを見てワダツミの娘かと分かった。
干珠満珠だ。
珠は二つ。泡が見えた。
ヌタが差し出した。

海は大荒れ。ワシはピーンと来た。
この男が豊玉姫をさらって逃げてるんだなあと。
さらった訳ではなく、一緒に逃げた。

ワシ等は考えた。たいそうもてなした。何せワダツミの娘だ。
舟を用意するまでに五日かかると言った。

すると、ヌタは用意するものがあるから”娘を頼む“と置いて行った。
ワシ等は“安心して行って来るがよい”と言った。
その頃、ヌタはワシ等の事を信用していたからな。
さあ、それからワシ等一族とワダツミの神との交渉が始まった」






2018019




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by lunabura | 2018-10-19 21:22 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

ワダツミ28 海と陸



 ワダツミ28  
海と陸

 
  
 

庸の話が一段落したところで、私が質問をした。

「ここにいるアリサとはどんな関係ですか」
そう尋ねると、庸はニコリとして、
「分かりませぬか。姉上は分かっているではありませんか」
と姉に言うと、和葉は「豊玉姫」と言った。

庸はこちらに向いて、
「あの方が豊玉姫ではありませぬか。
門が閉まる前に姉は豊玉姫にウガヤを戻しました。
それから海と陸の門が閉まりました。
皆さんが集まったお蔭でワダツミの神の怒りが鎮まりました。
またやり直しなんです。
本当に目指したものをこれから…。
海と陸と空が一つに…。
やり直しなんです。
少しお役に立てたことで、ワダツミの神や豊玉姫にお返しすることができました」


「海と陸の戦いとは何ですか?」
「あの頃、海が急に荒れたり、台風が来るとワダツミの神のせいにしました。
その頃は地震なども多く、それも全てワダツミの神のせいだと。
恩恵を受けていることを忘れ、人々はワダツミの神を封印しようと動き出しました。
ワダツミの神がいた頃は魚をむやみに獲らせませんでした。
波を起こし、船を出させず、魚を守っていました。

人々はワダツミの神の力が弱まるように、
アヅミの者をすべて陸に上げようと一計を案じました。

さすれば、ワダツミの神を封印すれば、海は静かになる、と。

ワダツミの神の威力はとても強く、援護するアヅミの力も大きかったのです。
そこで考えたのが、アヅミの者たちと仲良くなるため、一人、一組と陸地に上げていこうと、海と陸の婚姻を持ちかけてきました。

豊玉姫の結婚もその一つでした。
ワダツミの神は反対していましたが、豊玉姫は陸地に上がりました。
ただ、豊玉姫は男性を知らなかった。
海と違う匂いのする陸地の者にどんどん惹かれていって…。

大事に育てられ、初心でかわいい豊玉姫は人を疑うことを知らず、
陸に行くことになりました。

私は豊玉姫と共に陸地に上がりました。
ワダツミの神は私に豊玉姫のそばを片時も離れるなと命じました。

なかなか子が生まれませんでした。
陸の者は豊玉姫の子を望みましたが、子は出来ません。
急かされ困った豊玉姫が私に懇願しました。
これが私の最後の物語です」

菊如がねぎらった。
「よく話していただきました。他の姉妹はどうしたのですか?」
「皆ばらばらに陸地に上がりました。
そもそも巫女の力は絶大ですから、それぞれ請われて。

このように出会えたということは、また始まるとういうこと。
やり直せるということ」

「今日は会えて良かったですね」
「これで一つ罪が楽になります」
と庸は言うと崋山から離れて行った。

結願が終わった後、崋山が語った。

本来の玉依の血とアヅミとはまた違う。
豊玉姫は純血。
玉依の一族は人の血が入っている。
だから陸の人と子ができた。

和葉は山に入ってすぐワダツミに首を斬られ、ウガヤは海に連れ帰られた。
庸は自分の死後のことなので、それを知らなかった。
庸は辛子色の衣を着ていた。

豊玉姫は常に一人だけいる、
玉依は一世代に七人。 
豊玉姫と玉依は姉妹のように育つ。
玉依の中でも庸は豊玉姫と歳が近く、近しかった。
それで陸との婚姻にも付いていくように言われた。

庸の言葉を語りながら、崋山自身はそれを見ているという。


さて、のちに、現実界で鈴音に会った時、こんな話をしてくれた。

浜辺に立って海に向かい、鈴を鳴らしていたことを覚えていると。

こうして、ワダツミと言霊を交わしていたのかもしれない。


不思議な異世界のおはなし。
異世界の住人といえど、心を開くまでは真実を語らない。

それは庸もしかり。
志登での豊玉姫もしかり。


これからは心して耳を傾けようと思う。



20181016



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by lunabura | 2018-10-16 22:05 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

ワダツミ27 和葉 玉依 ウガヤを預かる



 ワダツミ27  

和葉 玉依 

ウガヤを預かる

 
  
 
封印されていた秘密を語った庸(よう)に、菊如は尋ねた。
「この中にお姉さまはおられますか?」
「おります」

「どの方でしょうか?」
庸は琴音(ことね)を指した。
琴音も既に自分の事だと分かっていた。
そのまま立ち上がって鈴音の側に行き、手を取り合って寄り添った。

菊如は庸に尋ねた。
「お姉さまのお名前は何とおっしゃるんですか?」
「姉の名は和葉(わよう)といいます」
そう言うと、鈴音は泣き崩れた。
そしてあふれる感情のまま、泣きながら謝った。

「私の我儘で全てを台無しにしてしまいました。
豊玉姫を傷付けてしまいました。
姉上の未来を壊してしまいました。

本当に申し訳なく思うております。
姉上の未来を台無しにして、申し訳なく思うております。

姉上はあの後、私を砂に埋め、ウガヤを抱きかかえ、暗い山の中に走り去りました。

姉上はそれから人目を避け、ウガヤを守ろうとしましたが、海ではなく、人間たちに捕えられました。

ワダツミの神は怒り、そして気付いてしまったのです。
豊玉姫の子ではないと。

それから海と陸の門を閉じました。

そして姉上も海には帰れず、でも陸の人間とも違う、そういう生き方になりました。
すべて私の我儘のせいで…」
庸は泣いて泣いて泣きながら謝り続けた。

「母心やもんね」
と菊如はやさしく慰めた。

そして尋ねた。
「お姉さまは知っていたのですか」
「姉上は全部知っていました。ただこれは人に言われると大変なことに。
私たちが考えても、結局のところ戦は起こってしまいました」

「長いから幸せでもなく、その時、一生懸命生きた事が大切ですよ。
素晴らしい人に生まれ変わっていますよ。」
と、菊如は諭すが、庸は泣き止まない。
「すべてをひっくり返してしまいました」
と嘆く。

「恵まれた人生がいいとは限らないのです。
何回も生まれ変わっています。
色々な経験をなさって、現世で素晴らしい方になっていらっしゃる。

あなたは世の中に貢献していらっしゃいます。
ウガヤの生まれ変わりは良い子に育っていますよ。

結果が良ければ良いのです。
今日、会えて良かったですね」

これを聞いて庸も少し心が晴れたようだった。
「これが私の罪、それを明らかにする事、それが条件でした。

ワダツミの怒りはおさまり、新しい時代に入っていきます。
私がこれを話すこと…。

私は姉上に謝りたかった、もうそれだけです。
私は罪を償いました」

「ウガヤの生まれ変わりに霊力があるのは何故ですか」
「もともと玉依の一族。巫女みたいなもんですから」
ウガヤの生まれ変わりの白皇は菊如たちと行動するうちに霊力を目覚めさせ始めていた。

ワダツミの神の直系ではない事が明らかになったが、玉依の一族も霊力が高い集団なので、その力を受け継いでいるという。

「ウガヤに伝えたい事はありますか?」
「私の我儘でこういう形になってしまいましたが、私の子としてより、豊玉姫の子として生きた方が幸せだったと思います…。
豊玉姫の子ならワダツミの孫。
それを何度も考える日々でございます」

「どっちが良かったかなんてわからないですよ。
あなた無くして生まれた子ではないのですから。

ところで、今ここに、関係する人々が集まっているのは何故でしょうか?」
「重要だから海の者たちが集まっているのです」



庸は海から打ち上げられたが、そこには姉の和葉が待っていた。
そして子を預かり、庸の亡骸を埋め、山に入っていった。
その後、人間に見つかってしまったという。

一方ワダツミの神はウガヤが豊玉姫の子ではないことを知った。

そののち海と陸の門が閉じられたという。

この物語の場所は志賀島の勝馬(かつま)。
勝馬には沖津宮と仲津宮と表津宮の三社が海を囲んで建っている。

その海の近くに洞窟があり、神々はそこから時々この海に姿を現すことから、神遊瀬とも呼ばれた。

その浜にワダツミの神の陸地の神殿があったと、崋山は語った。



20181015

『神功皇后伝承を歩く』下巻71志賀海神社



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by lunabura | 2018-10-15 20:50 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

ワダツミ26 庸2 秘められたウガヤの出生



 ワダツミ26  

庸2 

秘められたウガヤの出生

 
  
 
2018年6月2日 。私たちは再び集まって結願をした。
竜宮祭から一月経っていた。

菊如は宙から庸(よう)のカケラの一部を取り出し、崋山の額に入れた。

すぐに庸が現れた。

菊如はきさくに語り掛けた。
「庸さんお久しぶりです。あれから足は良いですか?」
庸はなかなか答えない。首を振り、うつむいて右手で畳をかく。

「どうされました?」
しゃべれないでいた。

「舌がないのね」
菊如は倶利伽羅龍王の術で舌を戻し、聖水を飲ませた。

すると庸は話せるようになって、
「私が姉に渡した子はウガヤではございません」
と言った。

庸の話はその死の直前から始まった。
庸は瀕死の状態で子を姉に託したのだ。

「その子は誰の子?」
「姉にウガヤとして渡したのは私の子です」

「あなたの子をどうして?
豊玉姫様と山幸彦様のお話ではない?
庸さんと山幸彦さんのお話?」

「豊玉姫には子がいたのですか?」
庸はうなずいたが、菊如は真実を見抜いた。「本当は庸さんのお子様…?」
庸はたまらず、うなずいてしまった。

「ご心配されないでください、過ちなどは誰にもあることです」
そう言って慰めると、菊如は白皇を指して、
「ここにいるのは本当のウガヤですか?」
と確認した。
「そうです」

「あなたの子ですか?」
「そうです」
庸はしっかりと答えた。

「どうしてそのようにしてしまわれたのですか?」
「…。話します」

菊如の前では嘘をつき通せないと観念したのだろう。
庸は真実を語り始めた。


「実は豊玉姫には子はいません」
皆が驚き、息を呑んだ。

そして、私は質問をした。

「どういうことか良く分かりませんが」
「豊玉姫には子はいません。
海と陸を結ぶには、どうしても豊玉姫とあの方の御子が必要で…。

でも、豊玉姫には子ができませんでした。

それで豊玉姫は
『私の代わりに子を生んで、その子を身代わりに。
その代わりにあなたのことを血を分けた姉妹としましょう。未来永劫』
と言われたのです」


「それでは本当のウガヤは?」
「本当のウガヤは、豊玉姫の子ですが、私が生んだ子です」

「あなたの子に違いないのですね」
「はい。豊玉姫の子ではありません。
そのことを言ってはならぬ、と私は舌を切られました。
他言してはいけないと。
そうしないと、また海と陸の戦が始まると…」

「豊玉姫と山幸彦は結婚し、あなたの子を養子にしたということですか。
豊玉姫と山幸彦の結びはあったのですか?」

「ありました。
豊玉姫は一人ぼっちでした。子が出来ぬから。
人間たちと交わることができず…。

海の者は子が出来ずとも気にしませんが、陸の者は違っていました。
それでは海とこの地は永遠に戦い続けなければならない。
ずっと、せかされ、追い詰められました」

「豊玉姫があなたに頼んだのですか」
「はい。豊玉姫が私に頼みました。
『この国、我らの海を守るため、そなたの力を貸してくれないか』と。

私は生まれてからずっと豊玉姫と一緒でした。
豊玉姫の苦しみも分かりました。

でも、山幸彦様はこの事を知りません。

子が生まれる半年前から、豊玉姫は山幸彦様に逢っておりません。
お腹が大きくなると共に、豊玉姫のお腹も布で大きくしていきました」

懐妊したように見せかけることは出来ようが、男女の契りはどうしたのだ。
豊玉姫の寝所に庸がいて、山幸彦が気づかなかったというのか。
敢えてそこを尋ねることにした。

「でも、契りはどうされたのですか?」
「暗闇ではわかりませぬ」

そうか。
現代の夜と古代の闇ではその差は大きいのかもしれないが…。

庸が続けた。
「豊玉姫も私もこの国の為の事でした。
ただ、山幸彦様のことは私も嫌いではありませんでした。

これは誰にも話してはならぬと言われ…。

ただ自分の子を自分で育てたかった、それだけでした。
それは許されぬことでした。
私が連れ去らなければウガヤにはまた違った未来があったと考えます…」

誰にも話せぬように舌を切られても、庸は我が子を胸に抱ければそれでよかった。
しかし三日育てると情愛は極まり、手放せなくなってしまい、
我が子として育てたくなった。

四日目に竜宮から子を抱いて逃げ、陸に向かい、
途中でサメに足を喰われ、浜に打ち上げられた。
姉に子を預けて亡くなってしまった。

「だから、この前は話せなかったですね。それを」
菊如は言った。




20181014


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by lunabura | 2018-10-14 20:05 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

ワダツミ25 庸1 ウガヤフキアエズの玉依だった



 ワダツミ25  

庸1 

ウガヤフキアエズの玉依だった


 
  
 
さて、七つの珠の奉納は無事に終えたが、
ウガヤフキアエズの事がどうしても理解できなかった。


分かったのは志賀島のフキアエズ朝が襲撃され、
一人のウガヤは熊本の宇土へ、
もう一人のウガヤは北九州の赤坂に船で逃げたことだ。

少なくともウガヤフキアエズが二人いることになる。

宇土のウガヤには子が生まれず、赤坂のウガヤは戦いに巻き込まれて死んだ。
いったい血脈はどうなったのか。

ウガヤの母・豊玉姫にさかのぼると、
豊玉姫は双子を生み、一人は殺され、一人は生き残ったという。
数が合わない。

系図を書こうにも書くことができない。

そして菊如から断片的に、豊玉姫と姉妹のように育てられた玉依がいる、
と聞いていた。

玉依とはワダツミの力を持つ者と人間の間に生まれ、海からの言霊を聞く者という。

玉依はワダツミの者の養育係の役職名で、代々七人で編成される。

その玉依の一人がこのブログの読者である鈴音(すずね)だった。

鈴音は自ら菊如に連絡を取り、小戸の妙見宮で顔を合わせた。

菊如は鈴音を見るなり、ワダツミと関わる人、と分かった。
そこで、本人にカケラを見せてもらう許可を得て、結願をした。

それで鈴音の過去生の名は庸(よう)だと分かった。

庸は玉依としてウガヤフキアエズの養育係となった。
そして三日間ウガヤを育てると自分で育てたくなってしまい、
四日目にひそかにその子を抱いて竜宮から陸へと向かった。

ところが、途中、海の中でサメに襲われて足を喰われてしまった。

庸は砂浜に打ち上げられた。
そこは志賀島の勝馬だった。

庸はそこで自分の姉に赤子を預けた。

庸はこの時、しゃべらぬように舌を取られていたという。

庸は何を口封じされたのか。
赤子はどっちのウガヤなのか。

疑問を菊如に話すと、新たにその結願をすることになった。


20181013





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志賀島 勝馬 沖津宮 



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by lunabura | 2018-10-13 19:59 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

ワダツミ24 竜宮祭4 神占大島



 ワダツミ24  
竜宮祭4

神占大島
かじめおおしま

 
  
 
無事、船泊まりに戻り、私たちは竜宮祭に参加した。
正しくは「宮崎宮 竜宮神社祭」という。




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場所は弁財天社だが、祭壇は海に向けられていた。
今回の玉串奉納は白皇だった。
ワダツミの血を受け継ぐ者として。


祭事が終わったあと、崋山がまだまだ考え込んでいた。
そう、各神社に奉納した「七つの珠」のことだ。
それをパーンと割らねばならないのだという。
珠が割れて、復活したワダツミの神気が飛び出すのだ。

そういうことだったのか。
最後まで、その仕組みに驚かされ続けた。


私たちは竜宮神社のある海に向かい、崋山の音頭で一度だけ拍手をした。
ちょうど、博多の一本締めのように。




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これが2018年5月3日のことだ。
こうして奉納の神事はすべて完了した。


直会(なおらい)に参加し、この大島が祝詞(のりと)に「神占大島」(かじめおおしま)と唄われていることを知った。私たちはレンタカーを手配したままだった。
どのようにも動けるようにと、借りていて使っていない。

せっかく借りた車なので、私たちはもう一つの竜宮祭の方に玉串を奉納することにした。
地図を見て見当をつけ、山の方に上がっていったが、行きつかなかった。
一番近くと思われる所に玉串を立てて帰路についた。

後で聞くと、もう一つの竜宮社の方も船でないと行けない所だったそうだ。


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20181012




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by lunabura | 2018-10-12 18:22 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

ワダツミ23 竜宮祭3 封印解けし時



 ワダツミ23  

竜宮祭3

封印解けし時

 
  
 



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大島の船泊を出ると、船は大きく左に旋回した。




東へ東へと朝日の方向に進んでいく。




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そして、二つの岩が見えた。
小さな方に赤い鳥居が見える。







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これが竜宮神社だ。

祭なら海上から参拝するのだが、この船は幟を立てるために出されたものだ。
私たちも上陸の機会を与えられた。







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岩によじ登ると赤い鳥居。そしてその奥に石の祠。
それを見て私は思わず「鍵穴だ」と叫んだ。

そう、七つの宝具の一つは「鍵」なのだ。
鍵で開けて宝具を入れる算段だった。

菊如が祝詞を挙げ始めた。
白皇が宝箱の封印を解くと崋山が宝具を取り出して祠に向かった。

そしてその穴に入れると、戻ってくるときに巫女になっていた。
いや、豊玉姫だろう。

そして、白皇に「よう来られました」と告げた。

それから船を出してくれた人の前に立ち、「連れて来てくれてありがとう」と述べた。

さらに「何があっても驚かないでください」と言った。
確かに…。私たちは慣れているけど、初めての人には…。
こんな岩場で何が起こる?

そう思いながら見ていると、崋山はいったん体をかがめ、それから大きく伸びをした。
その時には別人になっていた。
ワダツミの神の姿だった。
海に向かって立ち、伸びをすると、左手でコブシを作って腰に当て、右手を開いて突き上げた。

二千年の封印が解けた姿だった。


そして、白皇をねぎらい、船を出した人に礼を言った。
「これから栄える。魚が戻ってくる」と。
そして「海から我が国を守る」と力強く言った。

こうして無事、私たちは七つの宝具を奉納し終えた。

思えば最高の神仕組みが待っていた。








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その後、船から振り返ると、龍の形をした雲が集まっている。
そうだね。ワダツミの神は龍神なのだ。
祝福の龍雲だ。

「それにしても、後で思ったけど、崋山は鍵を開けた?」
と菊如に尋ねると、
「あの時、崋山は鍵を開け忘れたから、私が祝詞を読みながら開けたよ」
という。
ああ、左手でコチャコチャとしたのがそれだったんだ。


20181011







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by lunabura | 2018-10-11 19:30 | 「ワダツミ」 | Comments(2)

ワダツミ22 竜宮祭2 船で行ける!



 ワダツミ22  

竜宮祭2 

船で行ける!

 
  
 
さて、夕食後の事だったろうか。
またもや、ピンチの話が出て来た。
翌日の干潮時間は朝の5時では無かった、という情報が入って来たのだ。
実際の干潮は、帰りのフェリーに間に合わない時間帯だった。

万事休す。

これで竜宮社に行く道は断たれた。
「最悪の場合、弁財天社から海に向かって宝具を投げればいいと思う」
と私は言った。

「七つの珠のことは言うなれば神々からの依頼なのだから、最後まで首尾よくいくように仕組まれてるはずよ」
とも言った。

正しくても間違っても、上手く行くようになっている。
いくつものケースをシミュレーションしながら、どれにも対応できるようにしておけばいい。

それが見えない世界との付き合い方。
人間があれこれと考える以上のことは良く起きる。

取りあえず、翌朝の食事は7時に普通に食べられることになった。

5月3日。
食事を済ませてボチボチと化粧をしていたら、崋山が外から戻って来た。
「すぐ行くよ」
「え?」

「急に海が凪いできたから、竜宮社に幟(のぼり)を立てに行くんですって。
船で行くから乗せていってくれるって」

ホイ来た。
そう来るか。

ということで、大慌てで支度を済ませた。









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幟が各家から持ち寄られてきた。
幟は赤色。
手描きで「奉納 竜宮祭」と書かれている。
ああ、これが本来の姿だ。








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昨日の低い雲はすっかり消えて快晴となっていた。








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さあ、出航だ。

20181010






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by lunabura | 2018-10-10 20:19 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

ワダツミ21 再び大島へ 竜宮祭1



 ワダツミ21  

再び大島へ 

竜宮祭1

 
  
 
七つの宝具を手に入れてから一か月ほど、
邪魔が入らぬようにこの件は他言しなかった。







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竜宮祭は5月3日だ。
私たち四人は竜宮祭に向けて前日から大島の漁師の宿「旅館 ふじ島」に泊まり、祭について話を伺った。

竜宮祭は年に二回、春と秋に大漁祈願のために行われる祭だ。
春は5月3日。

船溜まりからボート(漁船)で竜宮神社のある岩に行って祭を催行する。
例年15人ほど、五組のボートで執り行うという。

この祭には地元の婦人たちは参加しない。
直会も男性だけで行われる。

竜宮神社がある所は厳島神社ではない。
そこからさらに北西に続く荒磯の先にある。

普段は舟で渡るが、引潮時には磯伝いに行くこともできるという。
行くのは簡単ではなかった。

女人禁制という訳ではないが、
いよいよの時には白皇だけが参加することになる。

宝具は竜宮社に向かってワダツミの血を受け継ぐ者が投げ入れれば良かったので、
白皇が船から投げればよいだろうと考えていた。

ところが、話を伺ううちに竜宮社が二つあるということを聞いた。
二つある???
いったいどちらに納めればよいのか。
もう一つは本村の方にあるという。こちらは新村。
はて、さて。
誰も、どちらなのか、イメージが来ない。

しかも、最悪な事態が発生。
シケのため、船が出ないことが前夜の内に決定された。
船が出ないなら、干潮時に磯伝いに歩いていくしかなかった。

早朝五時だ。
新村と分かっているならそれで決行する。
しかし、どちらか分からない。








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それにしても、この海の幸の数々はどうだ。
これは単なる前菜。
魚の本当の美味しさを初めて知ったのである。


20181009




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by lunabura | 2018-10-09 20:24 | 「ワダツミ」 | Comments(0)

ワダツミ20 ウガヤフキアエズ2 名も無き人として死んだ



 ワダツミ20  

ウガヤフキアエズ2 

名も無き人として死んだ

 
  
 
七つの珠をすべて奉納し、七つの宝具を手に入れた夜、菊如たちはそれを精査し、翌日、その結果を崋山が知らせてくれた。

まず、途中で訪れた貴布祢神社について話してくれた。
小倉駅の東にあるこの神社で、白皇が頭が痛いと言い出した所だ。
企救の長浜という白砂清松の地だった。

そこに祀られていた八大龍王は青い龍だったそうだ。
1300年頃にここに祀られ始めたのだが、汚れて朽ちかけていた。
それを癒すと本来の姿に蘇ったという。

そして、ウガヤフキアエズについて結願をしたらしい。
なんと、この企救の長浜で起きた事件が出て来たという。

サワラビメのミコトが志賀島に攻め入り、本物のウガヤフキアエズを見つけ出して殺したという話をしていたが、やはり人違いだったという。

確かに、誰が王子なのか判別は困難な時代なので、一理ある話だ。

崋山によると、
本物のウガヤフキアエズは船に乗って陸伝いに東に逃げた。
黒い衣装で、短い烏帽子のようなものを被っていたという。

そうして着いた所がこの小倉の企救の長浜だった。

ところが、そこでは二部族の間に戦いが起きていた。
何も知らずに船でやって来たウガヤフキアエズは戦いに巻き込まれてあっさりと死んでしまったのだという。

名も無き人として。

この戦いから、そこは赤坂という地名になったとも。
実際、赤坂海岸と言う地名がある。

歴史的に考えると、ウガヤフキアエズにはその功績が伝わっていない。
名も無き人として死んでしまったとしたら、確かに伝わるものはない。

ウガヤフキアエズの記憶を持つ白皇が貴布祢神社の境内に入ったとたん、頭痛を訴えたのはこの時の記憶だったのだろうか。

崋山が言うには、当時、海の民と陸の者の争いも起きていた。
陸の者からみると、ワダツミの神は津波や竜巻、台風をもたらす悪神なので封印されたのだという。

なるほど、そういう事か。

しかし、謎が一つ解け、また一つ増えてしまった。

この日分かったのは、サワラビメのミコトが殺したウガヤフキアエズはダミーで、本物は北九州に逃げて現地の戦いに巻き込まれて死んでしまったという事だ。

それは分かったのだが、宇土に逃げたウガヤフキアエズは何だったのか。
これもダミーと言うのか。
宇土の方も子供が出来ていない。

歴史的にはウガヤフキアエズは玉依姫と契って神武天皇が生まれている。
赤坂のウガヤも早々と死んでしまったなら、神武は生まれていないことになる。

まあ、異世界にアクセスしているのだから、歴史と同じ必要はないのだが。

しかし異世界は異世界で矛盾無い世界があるはずだった。



20181008



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by lunabura | 2018-10-08 20:27 | 「ワダツミ」 | Comments(0)
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