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ひもろぎ逍遥

カテゴリ:「脇巫女Ⅱ」( 29 )

脇巫女Ⅱ 28 タギツ 石占い

脇巫女Ⅱ

28 タギツ 石占い






 
次に現れたのも女性だった。崋山の顔を見て、菊如がクスっと笑った。
「オタフクさんですね」。
美人ではなかったようだ。菊如が改めて尋ねた。

「地の人ですね。お名前は?」
「タギツ。浜の名前、タギシの浜から付いた名」

タギツの言語は柔らかい外国語だった。言語変換がされて、日本語となった。
「出雲に多芸志(たぎし)の浜があるけど」
「こちらにもタギシの浜があります」
出雲と鞍手周辺には似た地名がいくつかある。特に鞍手のキヅキ(木月)は出雲のキヅキ(杵築)を連想させた。この話になった。

「木月は杵築だったのでは?」
「その字は使えなくなりました。隠さねばならないものがあるのです」

「何を隠すの?」
「『築』が使えないのです」
それ以上のことは分からない。

「木月に大己貴は住んでいたの?」
「よく分かりません。あそこの地は沢山の小さなお屋敷がありました。一つの集落になっていました。不思議なことに、他とは違っていました」

お屋敷について尋ねると、
「一人住まいのような」と言って高床式らしき家のようすを手で表した。「他の人は地面に住んでました」
これは竪穴式住居のことらしい。木月には高床式と竪穴式の住居があった。これは吉野ケ里遺跡と同じだ。

菊如はさらに尋ねた。
「他の人たちってどんな人?」
「他の人とは会ったことはありません」

「六ケ岳はどんな感じの山?」
「とても高い山で、上が雲にかかる高さ。とうてい登れるような山ではありません」
いったいいつの時代か、また疑問が生じる。
菊如が私に質問を促した。私は驚いてばかりで、思考停止中だった。
この女性がタギツ姫なら大己貴と結婚していたはず、と思い当たって尋ねた。

「誰かと結婚していましたか?」
「していません」
三女神の一人ではなかった。予測が外れた。
菊所が尋ねた。
「お仕事は?」
「石で占いをしておりました」
タギツは50センチ×60センチほどの平らな石を手で描いた。右手で複数の小石を石台に投げる動作を繰り返した。私はルーン文字を描いた小石で占う姿を連想した。

「どこにいたの?」と菊如が尋ねると「亀甲(かめのこう)」と答えた。
亀甲とは!熱田神宮の縁起では、ヤマトタケルが熊襲討伐から戻ってきて、戦勝のお礼の祈りをした所ではないか。熱田神社の宮司が心身清めて祭祀をしていたという。それは剣岳の麓にある。
そして、術師がいたという話を星読が書いていた。

「誰か来た?」
「二人で占いに来られた方があります」
二人と聞くと、ヤマトタケルと武内宿禰が連想された。

「目の色は?」
「一人は黒、一人は悟られぬように伏せて、違う色の目でした」
やはりヤマトタケルと武内宿禰だ。私の夢に出て来た二人。タケルの目は青。

「何を聞かれた?」
「今いる場所からどの道を通って西に抜けると良いかと。三つのルートを示されました」

「どう答えたの?」
「その一番真ん中。川と海から離れた場所。陸路です」
西!

それはヤマトタケルと武内宿禰が佐賀の熊襲タケルを襲う時の話に違いない。『風土記』にもタケルが何度も出てくる。

佐賀大和への遠征ルートを占ったのだ。熊襲タケルが逃げ込んだのは佐賀大和だった。
鞍手からヤマトタケルたちは陸路を通って当時「ありなれ川」と呼んだ三笠川~筑後川に出て、有明海の波が洗う佐賀に出たことになる。

菊如が尋ねた。
「白山には誰か他の姫がいた?」
「私には分かりません」
白山とは鞍手にある山のことだ。ここにも多くの歴史が埋もれているが、まだ手が出せなかった。

ここで、話は終わり、タギツは抜けていった。崋山の自意識が戻って来たとき、「出雲はヤマトタケルを快く思っていなかった」と言った。

<2019年11月10日>



以下は佐賀の記録

http://lunabura.exblog.jp/21648939/
ヨド姫三社めぐり(6)大願寺廃寺~健福寺
日本武尊が熊襲タケルを討伐した所だった

http://lunabura.exblog.jp/21679856/
ヨド姫三社めぐり(7)真手(まて)山
熊襲タケル対ヤマトタケル

木月剣神社 『神功皇后伝承を歩く』上巻17 神功皇后が日本武尊の旧跡で祈った







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by lunabura | 2019-11-10 19:28 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ 27 シンロンの長はロージ―/田心姫


脇巫女Ⅱ

 27 シンロンの長はロージ―/田心姫


前回割り込んで来た沖ノ島の関守・ジンヨウの部族にも姫がいた。シンロンという名だった。

崋山にシンロンが懸かった。

菊如は船乗りのふりをしてシンロンに尋ねた。
「はじめまして。関所の方から聞きました」
「わらわのことですか」

「お名前は?」
「われ。シンロン。日本語で田心と書く人と同じ。われ心田(シンロン)」

「タゴリ姫と呼ばれていたのですか?」
「我はあの者の仲間ではございません。そこに居たことはありますが。
その人は大切にされていました。
宗像の田島に住んでいる「心」の字が付く女性で通訳をしていた。
田島に住むシンロンさん。「田心」さん」

「その人はどういうことをなさっていたの?」
「雨が降らなければ降らしたり、祈りを捧げたり。
神ではありません。雨が降り過ぎて波が高くならぬように祈りを捧げただけ。神ではありませぬ」

菊如は話題を変えた。
「いっぱい素晴らしいものが届きよったんですね」
「そう。光る石も採れるし」

これを聞いて私は質問した。
「それは金ですか?そこでも精製していたのですか?」
すると、シンロンは首を横に振った。
「ほら見たことあるでしょ」
とシンロンに言われたが、私はその時は思いつかなかった。
今思えば、鞍手の大塚古墳の石室にあった、ラメをまぶしたようにキラキラと輝く石のことだろうか。
よく分からない。

「農耕をしていました。畑だけでは暮らしていけなかった」
とシンロンが答えたが、菊如は話題を変えた。
「タギツさんは御存じ?」
「知らない」

「イチキシマヒメは?」
「知らない」

「他の女の人は知らない?」
「山の上に女性が一人住んでいると聞いたことがあります」

シンロンは四つの山の連なりを手振りで示し、海から三つ目の山を指した。
明らかに宗像の四連山だった。それを地元では四塚(よつづか)と呼んでいる。釣川を挟んで宗像大社の対岸にあった。

「四塚ですね。海から三つ目の山」
と、私が確認した。
四塚は海から湯川山、孔大寺(こだいじ)山、金山、城山。
金山!!
そこに女性が一人で住んでいたという。
孔大寺山は金が採れていた。
そこで、私は「金を採っていたのですか」と尋ねた。
「いいえ」

「金細工は?」
「それもしていません。関所から宝は来ていました」

菊如が尋ねた。
「長の名前は?」
「長はオージー様」

「姓は?」
「ウエクサ ジン・・(不明)」

「どこに住んでいるの?」
「釣川の上流に行きついた所」
そこはグローバルアリーナの南側になる。猿田峠の南。

さて、菊女が、時代が知りたいけど、どうしたらいいか、私に振って来た。
私も困ったが、北極星と北斗七星の名前を尋ねてみた。

「星には名前は付けません。ぐるぐるまわる・・あれ。名前でなく、形で伝えます。絵を見るように。人に知らせる時は絵に描いて知らせます。名前を付ける感覚はないんです」

西暦や年号の無い時代、何を以って時代を確認したらいいのだろうか。

シンロンの声が良く聞こえない。
以下はその断片。

「今は六ケ岳にいます。姫が集まるから。それぞれの姫が集まっています。それぞれの名前でこの国を表しています。
一つは田畑・・・田心(たごり)
一つは鉱山・・・市杵島(いちきしま)
一つは魚や水産・・狭依(さよりひめ) 海はさよりひめ
この三つで表しています」

シンロンの語りはここまで。次の存在が待っていた。

ここで分かったのは、シンロン(心田)の部族は中国から来ていて、宗像のグローバルアリーナの南に住んでいた。長はオージー ウエクサ? パオタン(泡丹)の元にジンヨウがいて、沖ノ島に関所を設けていた。農耕をしていた。

四塚の金山に女性が一人住んでいる。
宗像の田島(宗像大社の付近)には田心(たごり)姫と呼ばれ、通訳をする女性が住んでいた。



<20191108>



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by lunabura | 2019-11-08 22:10 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ 26 ジンヨウとパオタン 沖ノ島


脇巫女Ⅱ

26 ジンヨウとパオタン 沖ノ島



2016年12月5日。

スクネが初めて出てきておのれの最期を語った日、話が一段落すると、話題は沖ノ島に移った。

菊如はスクネに当時の沖ノ島について尋ねた。話に出て来る場所は昨日挙げた皐月宮の周辺だ。宗像大社のそばに釣川(つりかわ)が流れ、対岸に皐月宮、鎮国寺がある。

「沖ノ島は本来どんな島なのですかね。宝物がいっぱい出るんです」
「海から入ったり出たりする関所だ。金の無い者はすべてを置いて行かせた。入れるか入れぬかはそこで決める。外からの金銀財宝が眠っている」

「神の島と言われているんですが」
「近寄らせぬためじゃ。3、5の1。湊から入って来た。石があり、小高い山がある。そこから下に降りていく道がある。あの大社はそれらを隠すためのもの。島には神などおらぬわ」

「誰が島に最初に入ったんですかね。中国から三隻の船が入ってくるのが見えるんですが。水軍の長はスサというのではないですか」

この時、新たな男が来ていたらしく、菊如はスクネをはずしてその男を呼んだ。

「どけどけい」
男が割り込んできた。右手には武器を持って威嚇していた。菊如は悠然として尋ねた。

「お名前は?」
「ジンヨウ。あの地、我の地。入るでない」

「中国から来たんですか?中国から三隻の水軍で来ましたね」
「関所を通してほしくば、置いて行け」

片手を出して金を催促するジンヨウの言葉に応じて菊如はまるで船乗りのように演じはじめた。
「他のクニの船はどんなものを置いていってますか。我らも置いて行きますよ。ちょっと聞いたんですけど、あなたに任せた人を知ってるんです。ムカカタにいる人から任されたんでしょ。その人の名を出せば何もいらん。通行できると聞いてますよ。」
「パオタンか。パオタンがわれにこの地を守れと言った」

「どこからやって来たんですか」
「パオタンはわれと同じだ」

私が横から尋ねた。
「パオタンはどういう地域に住んでいるのですか」
「川だ」

「釣川ですね」
「関所で取ったものを箱に入れて腕に抱えて持って行って、赤橋の所で待ち合わせをした」

菊如はそれが何処か分かったらしい。
「鎮国寺の橋の所ですね。今は宗像大社になっている。何があったのですか。三人の姫様がおられることになっていますが」
「神様は海に住むわけがない。海に住む神といえば大亀か龍神かだ。ワニ族とか。
いいか。
われの時代は島ばかりだ。陸などない。海を船で行き来する。領土、線引きなどないね。
今の宗像大社の所も海だ」

菊如はさらに突っ込んで行った。
「パオタンって誰?」
「われらの船は陸に停泊なぞしない。海に留まって小さな舟で陸にあがるのだ」

ジンヨウは質問には答えなかった。が、菊如はさらに尋ねた。
「三女神の話があるけど」
「われらの時にはいなかった。月巫女は見たことがある。金と銀の扇を持って舞う。
突起した岬の上で巫女が踊っていた。われは神など見たことは無い。海の安全保障などできないぞ。で?」
ジンヨウは再び片手を出して金を催促した。

菊如はしらばっくれた。
「何もない。その人が名前を言えば通れると言ったんで。パオタン。どんな漢字なの」
「みな地域の名前を付ける。泡丹と書く。うちにもヒメがいるぞ」





――ジンヨウは沖ノ島の関守のようだ。中国から渡来し、パオタンの元で働く男だ。

これはまだ三女神の信仰が生まれる前の話だ。だからジンヨウは三女神の話を知らなかった。

これを聞いて思った。

日本海を航海するとき、沖ノ島は水の補給地として重要ではなかったか。水の補給地は陸の方は年毛宮(としもぐう)だった。
安曇族も宗像族もここで水を汲みだして海に向かったという。

沖ノ島は現在、水は少ししか出ないようだが、腐らないという貴重なものだ。
そうすると、航海中に水を分けてくれる関守がいたとしたら、宝物を置いていくことは大いにあるだろう。実務的だ。水の話は出なかったが。

<20191107>






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by lunabura | 2019-11-07 21:36 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ 25 スクネ再び


脇巫女Ⅱ


25 スクネ再び



2018年14日。
崋山に頭痛をもたらす原因の者が現れた。

菊如が挨拶した。
「こんばんは。前もそうやって出て来られましたね。
どちら様ですか。スクネさまですか」
男は左手を振り、頭をかきむしった。

「どうされましたか」
男は床を叩き苦しんだ。
「最後の最後に。すべてこの国。あの方の思いを遂げ…」

「あの方とは神功皇后ですか」
「すべて… くら~い くら~い ここは海の底。くら~い」

「頭はどうして痛くなったのですか」
「心許したばかりに。何がいけなかったか。間違いだったか」

「神功皇后の御子は二人でしたね。男と男か、女と女か、それとも男と女ですか」
「男と女」

「その子はどなたのお子さんですか。あなたのお子さんですか」
「私は誰も信じぬ」

「お二人が生まれたのをどなたからお聞きになりましたか。神功皇后からですか」
「違う。私の子と知ったのは生まれてしばらく経ってから」

「誰から連絡していただいたのですか。ヤマトタケルからですか」
「その頃、神功皇后は私を遠ざけようとしていた」

「何があったのですか」
「私の意見は、今は遠征の時期ではない。今はその地を治める時だ。東の風が吹くときに挑んでは行けないと…。しかし、神功皇后は今しかないと…」

「御子が生まれる前ですか」
「仲を取り持とうと…。ヤマトタケルが取り持ってくれた。神功皇后は、今せねば、この追い風に乗らねばと…。

私は今、国では内紛が起こっている。我が国は一つではない。内側を固めてからだと言ったが、神功皇后は何故か急いでおられた。
だんだん神功皇后から離れていかれた。
タケルが、御子は二人だと教えてくれた。
双子は不吉とされ、女の子は隠された。
一人目の男の子を神の子とした。
二人目の女の子の方が神の子と分かっていた」

「スクネさんには霊感があったのですか」
「分かったからといって、私一人が分かったとしても、人と意見が違えば世迷言。(よまいごと)
一度だけタケルからその子を抱かせてもらった」

「ある記録には、神功皇后の子とスクネの子が同じ日に生まれたと書かれていますが」
「私の子。ただ、そういう流れは私たちの時代はどうでも出来た」

「スクネさんの身分は?」
「あくまでも神功皇后のお側付き。方位、風を見て助言をする立場」

ここから私が質問した。
「ヤマトタケルとはどちらが年上ですか」
「私が二つ年上。
タケルはこちらのことばが分からない。タケルの代わりに話して、タケルに伝えた」

「ヤマトタケルの言葉はどの国の言葉ですか」
「今でいう、ポルトガル」

「神功皇后と住吉が寝所を共にした話が神社に伝わっているのですが」
「あの地に入ってすぐだった。
緑の葉を立て、巫女がこうして手に木の根を持ち、祭祀をする。
我が願いを、その住吉にお願いしたが、われわれもいた。
福岡の西。すみよし。潮の香がするところ。
滞在の為の屋敷があった。
神功皇后は浅はかでもない。

仲哀天皇が亡くなっておることを、神功皇后は霊力があるのに死を防ぐことが出来なかったと嘆いておられた。

世のため、人のため、祭祀をした自分が一番そばにいて、愛する者を守ることが出来ぬと嘆いておられた。
一番大切なものを守れないとき、自分の無力さ、人間であることを知るものだ」

「仲哀天皇の死の原因は何ですか?」
「仲哀天皇は毒を盛られた」

「誰からですか」
「私だ」

「何故ですか」
「神功皇后の仲哀天皇への愛情が邪魔になった。
愛情を知ると人は弱くなる。
神功皇后は普通の女になりたいと思っていたが、周りがそれを許さぬ。

「毒をあなたに渡したのは誰ですか」
「私たち周りの者だ。
神功皇后が立ちあがり、一つになる。
ある意味、可愛そうな女。
悲しい物語だ。
私の命令で始まったこと。戻るわけにはいかなかった。

皇后はそれをうすうす気づいて、少しずつ私を遠ざけて…」

「毒を盛ったのは何処ですか」
「仲哀天皇はその時、病に臥していた。
薬があると言ったら、仲哀天皇は疑いもしなかった。薬を運ばせ…」

「天皇の生命を奪ったのは何故?」
「神功皇后のままで居させるために」

「あなたと恋に落ちたのですか」
「同志のような」

「神功皇后の妹の豊姫はあなたの妻と言われていますが」
「違う。二人が近いため、私にあてがおうとしたが。二人が一緒になることは許されぬ。
神功皇后より先に死んだ。神功皇后の命令で殺されたのだろう」

「あなたが亡くなったのは」
「小舟で三人。暗い海。灯りは一つ。何かを受け取るために灯りを灯し、船の先端に立っていた。
向こうから船が近づいて来た。
何かを交換する。振り向いた瞬間に頭を殴打されてそのまま海に。
暗い海に落ちて行った。
意識が無くなる瞬間、いろんなことを考えた。
いろいろの者の死に顔を思い出した。
そして自分の死を受け入れた。
こうして私は地獄に落ちた。
私が知っているのはそのくらい」

「何を交換したのですか」
「暗闇の中に行ってでも欲しいもの。
私の子が欲しかった。
私の子ではなかった。
タケルが最後に抱かせてくれた」

「交換したのは誰と誰ですか」
「女の子と女の子。
自分の子と神功皇后の生んだ神の子。
女の子を見つけ出した。
女官の子を沖ノ島に。

仲介したのは他の国の者。海賊。
小さい子。女官の子。
神功皇后が我を遠ざけ始め、残るものはその子しかいなかった」

「取り戻したかった?」
「私も普通の人間ということ。私にはその子しかいなかった」

再び菊如が語り掛けた。
「その子を愛していたのですね」
「香椎宮には私が子供を一度だけ抱いた銅像がある。
この子は神功皇后の子。役目がある。そなたにお返しするぞ」

「名前は?」
「ピンクの着物を来た。そなたたちが必死に探しておる子。
大海原を守る子。
せおりつ。

我も心が晴れた。
我の罪を償い、この国のため、この人々のため、今ひとつ力を使わしてもらう。
今日、この良き日。感謝したてまつる」

「スクネさま。3月14日。亡くなったのはこの日ですか」
「今日、3月14日」

「忘れずにおきます。おつかれさまでした」

――これで崋山の頭痛も収まった。

今、読み返すと、分かったようで、よく分からない。
神功皇后が生んだのは双子で男と女だ。その父親はスクネだという。

しかし、沖ノ島の女の子と交換したのが誰と誰なのか。話が不明瞭だ。
スクネは自分の子と神功皇后の子を交換しにいったという。
すると、あの日、2月24日に子供が三人生まれたというのか。
出て来た女官というのは脇巫女サガミのことだ。
三人ともスクネの子なのか。

仲哀天皇を毒殺したのはスクネだという。
神功皇后はそれを薄々感じ、意見も異なるスクネを遠ざけ始めた。
それから、スクネは沖ノ島に幽閉された子と交換しにいって海に落とされた。
前回の記録ではスクネはセオリツと共に海に沈んだという。
何か肝要なことが不鮮明だ。

しかも、スクネは私たちがセオリツを必死に探しているという。
いや、全くそんな事はない。
何も分からないのだから。探す動機はない。

星読の想像した記録とも合致しない部分がある。

スクネは崋山に痛みを感じさせてまで伝えたかった本題とは何だったのだろうか。

<20191104>



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by lunabura | 2019-11-04 20:09 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ 24 スクネの最期


脇巫女Ⅱ

24 スクネの最期



2016年12月5日に話を戻そう。

鞍手を廻り、鞍手について結願をするので、誰が語るのか話し合うように、と告げた日のことだ。
この日はヤマトタケルが最期のようすを語ったが、その直後にスクネが出て来た。

菊如は語り掛けた。
「初めまして。ご用件は何でしょうか」
「我は武内宿禰。この有様を見よ。この足を」

「いつそうなったのですか」
「サラシナの沖合で船から落とされた」

「誰からですか」
「我を消そうと思う者」

「神功皇后ですか」
「我は用無しじゃ。神の子を授かった。この事態は調べるでない。いい話として収めることはできない。人間は心を痛めるだけじゃ」

「生まれ変わっていますよね。何処かではかりごとをされていますよね」
「どう語られようが、我は何とも思わない。しいて言うなら、この国のため」

「何処で亡くなったのですか」
「海。我の骸(むくろ)は何処にあるか知りたいか。業を正さないと同じだ。何度も繰り返す。
これからの時代、別の方向に使っていける。執着するのはもったいない」

「左肩はどうされたのですか?木で打たれて落とされたのですか?」
「小舟で我を入れて三人。先に様子を見てくるように言われ、明かりを持って船の先頭に立っていた我に、後ろから一突き。暗い海に落とされた」

「何かを受け取りに行ったのですか」
「そう。取り換えるためじゃ」

「何を?」
「赤子を取り換える。島に幽閉されていた赤子を取り換えに。
しかし赤子もろとも海へ。
…わが子。セオリツ。
沖ノ島に向かっていた」

「何故迎えに?」
「時が来た。セオリツと落ちた。我と神功皇后と…神の力を得た子。
我の力を受け継いだ子。何としても守りたかった。
我は暗い海に引きずり込まれ、セオリツは我が手から離れて…
どうなったか分からぬ」



こうして、この日スクネもまた自分の最期の様子を語った。
私はスクネが何故いきなりこの話をするのか、その意図が分からなかった。

そこで私はスクネに、この話をブログに書いていいのか、尋ねた。
スクネは「どちらでも構わぬ」と言った。
だから、私は書かないことにした。

しかし、一年半後に再びスクネが現れた。
その時は、殴打された時の痛烈な痛みを崋山に経験させる、というやり方だった。
私はスクネの話を再び聞くことになった。
しかし、この時も、書く気にならなかった。

私はその時既に「脇巫女」を終わらせていた。

しかし、ブログの読者のヒカリが鞍手に来た時、大きな、犬のような耳のある女性が現れた、と聞いて、六嶽の犬神が守っていた六角形の箱の話を思い出した。
これと関係があるのだろうか。
そんな疑問が生まれ、スクネの話を記録することにした。


<20191103>





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by lunabura | 2019-11-03 21:13 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ 23 月守の民の脇巫女 サガミ


脇巫女Ⅱ

23 月守の民の脇巫女 サガミ





◇◇◇
<2016.3.4-6> 

「月守の民」は「木月の宮」で多くの子をいつくしみ、大切に育てる者たち

「サガミ」はそこの巫女
神功皇后の出産に立ち会った巫女

神功皇后は件(くだん)の者たちと「男の子」を抱いて館に戻る
一方「サガミ」は「女の子」を抱いて「木月の宮」に戻る

この姿を見た「スクネ」は神の子は「サガミ」が抱いている
なぜだ・・・・あっ・・・双子だったのか・・・・
全てを悟った「スクネ」・・・・・この子はわが子・・・・・・
三代前を同じ過ちを・・・・・・

「スクネ」は驚くべき行動に出る
「サガミ」を妻とし「女の子」をわが子とした

その「スクネ」は
このことをヤマトタケルに打ち明けた

数日後、「サガミ」の元を訪ねた「スクネ」は
ひと時の間「女の子」を抱き、姿を消した

戻った「スクネ」は「女の子」を「サガミ」に渡して去っていった

何も知らない「サガミ」は
約束を守り
秘密を守り
「女の子」を育てる日々を送ることとなる

木月の宮から戻る「スクネ」
その腕には「神の子」が

「スクネ」はどこからか生まれたばかりの「女の子」と「神の子」をすり替えた

大切な「神の子」をこのような戦いの厳しい地においておくことは出来ない
そこで、この当時最も安全な地、荒波の先に浮かぶ「沖ノ島」の巫女に託すこととした

「神の子」はヤマトタケルが「沖ノ島」に連れて行った
ヤマトタケルは「沖ノ島」の巫女「カズラメ」のもとを訪れた

ヤマトタケルは巫女「カズラメ」にすべてを打ち明けた
巫女「カズラメ」は「神の子」を大切に育てていくこととなった
その後、巫女「カズラメ」は苦悩の日々を過ごすこととなる


一方、「サガミ」は幼子を残して「スクネ」に同行し、遠征に出る

「月守の民」の束ね「カサギ」は何も知らずに「女の子」を他の子と同様に大切に育てていた

「女の子」が3歳になったある日、ふたたび遠征に出ることとなった「スクネ」は
「サガミ」に「女の子」も連れて行くことを命じる

辛く
永い日々

遠征は繰り返された

戦っては戻り、また、遠征・・・また戦い・・・また戻る

4年の歳月が流れた

「女の子」が7歳の時、再び遠征の時が迫る

「サガミ」には以前より「想い人」がいた。
それは犯してはならぬこと・・それは行ってはならぬこと

しかし「サガミ」はこの時ついに「想い人」に会いに行ってしまった

「サガミ」は堰を切ったように思いを告げた
                ・・・話してはならないことも

これを悟った「スクネ」は
このことをヤマトタケルに報告する

二人は「サガミ」を亡き者にする決意を固める

「スクネ」は
亀甲(キッコウ)の「術師」に命じ
「サガミ」の声を奪う「呪文」を掛けさせた

「サガミ」は
助けを呼ぶことも
叫び声を上げることもできない

さらに「女の子」を奪われる
辛い
悲しい
悔しい
大切な「せおりつ」を返せ
声が出ない
助けを呼ぶこともできない

この後、「スクネ」は「サガミ」の生命を奪った
その「スクネ」の姿を見ていたヤマトタケル

「術師」もまた毒の水を飲まされて殺された
7歳の「女の子」も


「サガミ」は死してのちも「月守の民」のことが気になっていた
自分の責でひどい目に遭ったのではないかと・・・・・

一方、「カサギ」は辛い目に遭わせた・・・
自分が遠征に同行すればよかったと・・・・
思い悩んでいた

お互いは相手を思い、苦悩する魂となり何度も転生したが巡り合えないでいた

それは突然やってきた

魂の再会・・・・
涙の再会・・・・

泣き崩れながらもお互いの気持ちを伝えあう
詫びる「サガミ」
いたわる「カサギ」

お互いの魂は安堵の表情を浮かべ・・・・
現代の生活を送ることとなる・・・晴れやかな気持ちで

◇◇◇

神功皇后が神の子として生んだ「せおりつ」は月守の民の脇巫女サガミによって育てられたが、スクネは別の女の子と「せおりつ」をすり替えた。

ヤマトタケルは「せおりつ」を預かると沖ノ島に預けた。

何も知らないサガミはすり替えられた女の子を「せおりつ」と思って育てたが、7歳の時に二人ともスクネに殺された。ヤマトタケルはそれを見ていた。

 このタケルは二代目か。
 スクネも三代前の話が出ているから、四代目なのだろうか。

<20191102>






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by lunabura | 2019-11-02 17:57 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ 22 犬神が守りし六嶽(むつがたけ)


脇巫女Ⅱ

22 犬神が守りし六嶽(むつがたけ)


さて、時を巻き戻そう。私が初めて参加した歴史結願の日に。

2016年2月24日のことだ。

その日の目的は崋山の腹部に生じた二日間の懐妊現象の原因を探るためだった。

菊如が「六ケ岳、宗像、鞍手の物部について、述べたい者よ」
と呼びかけると、現れたのが六角形の箱を守る犬神だった。
それからムナカタ物部が現れて話をしていった。

話が深夜に及んだので、私たちはそこで退出したが、後で話を聞くと、崋山は疑似出産をしたという。

「神の子を生む」と告げて、生まれたのは男の子だった。
その子のヘソの緒を六角形の箱に入れた。

ところが、再び陣痛が始まり、さらにもう一人が生まれた。
それは女の子だった。
その女の子の方が「神の子」だった。
しかし、そのヘソの緒は入れる容器がなく、落ち葉でくるんで土玉にした。

この双子を生んだのは神功皇后だった。

この話について、星読が記録をしていた。
それを読んでいこう。

◇◇◇

2016年2月26日 犬神が守りし「六嶽」

これは、菊如さんと崋山さんが見えない者たちからの言葉や
見た物の話を聴いて星読が感じたことばで綴られている

もう一つの物語

神功皇后が「木月の宮」を訪れたときから始まる
神の子の出産にまつわる真実(ものがたり)

「月守の民」が暮らす「木月の宮」
「月守の民」が守りし神は「生命を司る神」
潮の満ち引きを行い
全てのものに「生」と「死」を与えしもの

そこに神功皇后がなぜ訪れたのか
理由はただひとつ
出産のときを知るため

多くの従者たちの前で子を生むわけには行かない

「月守の民」の「脇巫女」に出産の時期を聞くために「木月の宮」を訪れた

その時が近いことを知った神功皇后はしばしの間、留まることとした

幾日か過ぎ
「脇巫女」はそのときが来たことを告げる
この脇巫女の名は「サガミ」
「脇巫女サガミ」はこの地で最も神聖なる地へ神功皇后を案内した
その地は「六嶽」

「脇巫女サガミ」は神功皇后を山中に案内したが、山頂には案内できない
もう時間がない
出産の時が近い
「脇巫女サガミ」は民が勝手に入ることが出来ない「広場」に案内し
一足先に「社の中」が無人であることを確認して中に入っていった

神功皇后も「社の中」に行くつもりであったが、激しい陣痛に襲われ出産のときを知る
「広場」の茂みの中に「つる」が絡み、椿が根元を隠すかのごとく枝を張った大樹の根元に腰掛けた

今でいう2月24日・・・今日

神功皇后の出産が始まる
「脇巫女サガミ」は「社の中」から見守る

皇后は
「サガミ」を呼び・・・・・こう告げた

「今から我は神の子を生む よく見ておけ」と

ぶら下がっている「かずら」をつかみ
力強く
男の子を出産した
後の応神天皇である

「抱いてみよ」と言われた

「サガミ」が男の子を抱くと
皇后は
持って来た「黒塗りの六角形の箱」に大切に「臍の緒」を入れた

出産が終わったと思った「神功皇后」と「脇巫女サガミ」


時をおかず
再び陣痛・・・


二人目出産・・・姫君
この子を見たとき・・・神功皇后はとっさに悟った
神の子は・・・この姫君だ

「この子(姫君)を表に出すわけにはいかぬ」と神功皇后はつぶやいた
「では、どのようにいたしましょうか」とサガミ
続けてサガミが言った
「私がお育て致しましょうか」
「サガミは、そう言ってくれると思っておった」と神功皇后

サガミは神功皇后に「名前はいかが致しましょうか」と尋ねる

「この姫は海のそばで生まれたので名を『せおりつ』としよう」
「セオリツ姫」の御霊を受けし姫君

出産するのは一人の子と思っていたため、
「臍の緒」を入れる箱はひとつしか用意していなかった

このとき、姫君の「臍の緒」は落ち葉でくるみ、土で大切に握り固めた

男の子の「臍の緒」が入った箱は「社の中」に大切に収めた
神功皇后に仕えし者一名に
大切に守るように伝え

一方、姫君の「臍の緒」が入った「土だま」は
神功皇后に仕えし者六名に
「決して表に出してはならぬ」と告げ
四人は山を下りた

姫君の「臍の緒」を守るように命じられた六名の従者は
六嶽の犬神となり
今もなお、「六嶽」でこの「土だま」を大切に守り続けている

あのときの約束を守って・・・

山を下りた四人は人目を避け、「木月の宮」に戻った

その姿を武内宿禰に見られた
「脇巫女サガミ」は
「あゝ、わたしの人生は終わった」と思った

一方
すべてを悟った武内宿禰は
姫君を守るために

つぎの瞬間
こう叫んだ
「我が妻が、神功皇后と同じ日に子を生んだ」と

姫君は命を奪われることなく
「月守の民」の脇巫女「サガミ」の手で育てられた

その力が開花するその時まで・・・・誰もがそう思っていたが・・・


◇◇◇

この場所は現在の六嶽神社の境内だという。

「開けてはならぬ」と言って現れた犬神が守っていた「六角形の箱」とはこのことか。
犬神はいずれ私たちが必要となると告げた。


<20191101>





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by lunabura | 2019-11-01 21:06 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ 21 モリヤモノノベ


脇巫女Ⅱ

21 モリヤモノノベ



後日、初代ヤマトタケルの側近で、タケルの墓で自決した男が現れた。

モリヤモノノベといった。

モリヤモノノベの一族は鞍手の中心に住み、田畑を耕し、農耕を糧としていた。
戦いを好まぬ種族だった。

そのモリヤモノノベはサンジカネモチのことを知っていた。
「熱田モノノベはサンジカネモチのものではない。
あれは船でやって来た。
そして、熱田モノノベを自分達の物のようにした。
我々の地を奪ったのだ。

ヤマトタケルは鎧を付けて兜(かぶと)をかぶり、顔を隠していた。髪の色も分からない。
武内宿禰がヤマトタケルに近づけないようにしていた。

ある時、サンジカネモチとヤマトタケルが話していた。
モノノベは一体化してきているのに、サンジカネモチが反対していた。
私はヤマトタケル側について一緒に行動した」

「それなら、ヤマトタケルの最期のようすはご存知?」
「…。あの時…。
サンジカネモチが…。
タケル様が油断したから討たれた」

「サンジカネモチがヤマトタケルに容易に近づけたのは?」
「日本は古来から3m離れて礼をする。しかし、タケル様は握手を求める人だった。
あの時はサンジカネモチの方から手を差し出してきた。
『ヤマトタケル殿に協力する』と言って。

タケル様は馬を進めてサンジカネモチに右手を差し出した。
一撃だった。カネモチは左手で剣を抜いて胴体を刺した。
あいつは左利きだったのだ。

タケル様は倒れた。我らは山へ逃げ込んだ。
が、サンジカネモチは兵を隠していた。戦が始まった。
我はタケル様の鎧を身に着けて戦った。

敵が去ると、我らは山に入って、タケル様を埋葬した。
ところが、あの武内宿禰が影武者を立てた。
我らにはいく所が無くなった。
タケル様を囲んで我らは自決した」

「もし、サンジカネモチが殺さなければヤマトタケルが国を統一したと思いますか」
「タケル様は新しい景色、知識を持って来た。この地域を変える力があった。
船でやって来る人が変えてくれると…我も信じてもいた。

思えば、タケル様も駒の一つだった。自分たちも。
タケル様は心優しい人だった。この地を繁栄させる力が感じられた。
サンジカネモチは心がぶれた。
戦ではなく、この地で豊かに暮らすことが理想なのに、道を外れてしまった」

一つの事件も語る人が違えばこうも違う。
そんなことを考えさせられた。

<20191030>





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by lunabura | 2019-10-30 19:56 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(4)

脇巫女Ⅱ 20 ヤマトタケル ふたたび


脇巫女Ⅱ


20 ヤマトタケル ふたたび




その年の冬、12月5日に再び結願をすることになった。
その前に鞍手をまわった。
新延大塚古墳の石室を見学し、それからヤマトタケルの墓所に行った。

菊如はそこで祈ったあと、宙に向かって語り掛けた。
「今夜、鞍手のことについて結願をします。多くの方が待ってありますが、全部伺うことは出来ぬゆえ、誰が話すのか、皆さんで話し合ってください」

そう伝えた後、私たちは夜に集合した。

結願が始まると、ヤマトタケルが再び現れた。
「何を我に聞きたいのか」
「今日は何ゆえに来られましたか」

「そなたが聞きたいのではないか」タケルは左腕を押さえていた。

「痛みますか」
「ああ。いや。いろんなことが起きた」

「ここにミヤズ姫がいます。何か話すことはありますか」
「そういう時代に巻き込まれ、我は様々な物を犠牲にした。
我がメイ(命)はこの地を治めること。
我が生命尽きる時、メイを受け継ぐものあらば良し。
それゆえ、我、心をこの地に置かず。人に置かず。
我がメイを行うのみ。

ただ、そなたは我の事を慈しみ、我を求めた。
その思い、我は心に留めし。
ただ、その瞳、その瞳を見ること、我はせず。
我、ゆめゆめ、そなたの瞳を見ることをせず。

ただ生命尽き、そなたの思いを…。
我、そなたを迎えにいくこともせず。

そなたが考えるヤマトタケルは、本当のヤマトタケルにあらず。

我、あの地に眠る。
あの地に眠る我から七代、ヤマトタケルは代わる。知人は無し。

一人は病に臥し、一人は山を通りし時、民のイノシシの罠に落ちた。
青い目のヤマトタケルは四番目まで。
五番目のタケルは薄い茶色、あとは皆黒だ。目だけは隠せぬ」

このように、ヤマトタケルは私に語り掛けた。
私は、タケルが何を言っているのか理解できず、遠い世界の話として聞いた。

しかし、タケルの言葉が一段落すると、菊如が
「るなさん、何か聞きたい事は?」と促した。
聞きたい事は何もない。しかし、口から出た言葉は意外なものだった。

「木月で神功皇后と会っていたのですか」
恨みがましい言葉だった。

それを聞いたタケルは溜息を付きながら、頭を振って応えた。
「神功皇后はすごい方。私のような者はとてもとても。足元に及ばぬ方。
神功皇后は私の代わりのヤマトタケルが発動することも知っておられた。
そばにはスクネがおる。
三人の計画。
この三人に仲哀天皇は入らず。仲哀天皇はお飾りだった。
それを良く思う訳はないはずだが、何故仲哀天皇が表に出ないのか。
表に出られぬ訳がある。

仲哀天皇は殺された。二代目の仲哀天皇はヤマト国の者ではない。
今の中国。
応神天皇が生まれてすぐに薬を盛られて亡くなった。
仲哀天皇はいつも前に御簾(みす)を掛けていたので、誰も気づかなかった。
神功皇后はのちに唐と呼ばれるようになる国との繋がりもある」

「神功皇后は?」
「神功皇后はヤマト国。
唐と手を結ばねばならなかった。
仲哀天皇が殺されねばならない理由を知っていた。
あの姫を連れていたのは二代目ヤマトタケルだ」

「二代目仲哀天皇はいつまで生きていたのですか」
「スクネと共に行動した。スクネのはかりごと。二代目は42歳まで。
ドウジマと呼ばれる島に幽閉された。
神功皇后とは最期まで会わずじまい」

「どうして、あなたはミヤズ姫の目を見なかったのですか」
「目を見れば、受け入れてしまうではないか。
ヤマトタケルはこの国を一つにまとめるための者。統率者」

「日本書紀には名前は小碓(おうす・こうず)と書かれていますが」
「私は小碓(こうず)ではない。
自分の人生をヤマトタケルとして終わらせることが我がメイだった。
何事も深くあいまみえることなく、我がメイのために生きることが幸せか。

我は神功皇后に『我は何ゆえ、ヤマトタケルとして生きて行かねばならぬのか』といつも言った。
神功皇后は「メイのために生き、メイのために死す」と言われた。

我は未熟ゆえに生命を落とした。
あの時、信じたばかりに。
サンジカネモチは『我らに従う。和平を結ぶ』と言ったのだ。

あの刃(やいば)。
不意打ちだった。
前から堂々とな。

今、崋山の身体に入りし時、神功皇后の言葉を思い出した。
『この世に信ずるものはない。自分だけだ。
この世は力を持つ者と裏切られる者がいる』
神功皇后は我に『考えが甘い』とよく叱られた。

月の民と暮らす神功皇后を愛していたか?
いくつ違う。
私の八つ上だ」

「仲哀天皇は生まれた子がスクネの子と知ったので、殺された。
神功皇后と仲哀天皇の子は流れた。

『神の子』
この世界に起こる嵐。この世の嵐を収める。
初めは応神が神の子と思っていた。
その前に生命を落とした。

『はかりごと』
仲哀、神功、スクネのはかりごと。
神功と唐のはかりごと。
中心にいるのが神功皇后。

サンジカネモチは忠義のある者だったが、ミヤズ姫のことになると熱くなった。
一つの事に集中すると熱くなる。
そういう者こそ国を治めるのに適した者と思ったが、荒ぶる心を押さえられぬ所があった。

サンジカネモチは『我を信じよ』と言った。民に向けて。
我はカネモチを信じた。

そこをどう捉えるか。
信じた者を討つも、敵であっても、すべてあの時代の流れ、と。

ヤマトタケルとして死に、このように表に出る。
そなたらが知っておるような立派なものではない。
沢山の者を殺した。
それらが上がらねば、我も上がれぬ。
六人のヤマトタケルも同じ思いを引きずっている。

サンジカネモチはこの地を守るため、国を守るため、やり方は違えど、繰り返してはならぬ。

何が足りなかったのか。
あの頃出来なかったこと。今は出来る。
手を組んでいる者と。

神々は、しかと土の中より立ち上がり、出て来ておる。
もう最後じゃ。
最後の固め直し。

サンジカネモチは申し訳ないと思う前に、出来ることがある。
我の代わりに国を治め、手本となる道の歩き方をせよ。
そなたから歩き出せ。

ミヤズ姫はケタケタと笑う明るい姫だった。
我が死んだことを伝えたかった。
友好の証しだった。

二代目ヤマトタケルは久山(ひさやま)を通り、長崎の方に回った。
クマソから挑んで来た。
あれを収めねば、収まらない。
スクネも華奢(きゃしゃ)な身体付きで、淡い薄い布を巻くだけで女と思われる。
スクネの案で二人で行った。妙な力があった。相手の考えの裏の裏を読む力があった。

亀甲で占ったのはスクネだ。興味があった。

『新日本司』
船が着く。
鉱山の岩に船が着く。
武器を求めて他国からも来た。岩山―キラキラと輝く。
岬になっていた。

鞍手の白山には二代目が入った。

長谷観音の地は、我らの言葉をしゃべらぬ者たちが住む場所だった。赤い色が付いている。我らが行く所ではない。

我が鞍手にいたのは、3年3か月ぐらいだ。鞍手を本拠として移動した」

「始まったばかりだ」
そう伝えると、ヤマトタケルは去って行った。


<2019023>




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by lunabura | 2019-10-23 21:19 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ 19 独白


脇巫女Ⅱ


19 独白

 

さて、ある日、菊如と崋山の結願で「熱田サブロウタ」が呼び出された。
この男は結願があるたびに来ていたが、姿を現さないでいた。

この日、崋山の身体を借りて、「熱田サブロウタ」は語った。
星読がその場に居合わせた。

◇◇ ◇
見えない世界から「熱田サブロウタ」を呼んでみる
何日も前から来ていたそうだ

だが・・・なかなか現れない・・・どうかしたのか?

やっと現れた・・・その姿を見て驚いた

怯えている
確かに怯えている
目を合わそうとしない
それどころか、星読の顔も見れない状態だ

「何があった」
星読は促すが・・・サブロウタはただただ怯えている

なぜ?
星読には状況が掴めない

菊如と崋山のやりとりを見つめるだけだった

やさしく、うながすように菊如が声をかけると
「熱田サブロウタ」は小さな声でささやいた

「殺した
イチキシマ姫を殺した
熱田の木の根元に埋めた」

そう言うと、「熱田サブロウタ」は小さくうずくまった


この時、はっと突然、星読は「サンジカネモチ」になった

サンジカネモチは「熱田サブロウタ」に語りかけた

「もうよい
辛い思いをさせたのう
もうよい・・・もうよい
サブロウタよ、余を見よ
すまなかった
もうよい・・・もうよい」

更に続けた
「余がフルベで死んだことを知って
余の言い付けを守っただけじゃ
もうよい
辛い思いをさせたのう
もうよい・・・もうよい
サブロウタよ、余を見よ
すまなかった
もうよい・・・もうよい」

熱田サブロウタは最後までサンジカネモチの顔を見ようとはしなかった
ただただ小さくうずくまっていた


「熱田サブロウタ」
その者は「熱田」に残り
攻め込まれたときには
「姫」ともども自害せよと言い付けた
下級の武士

最後まで言い付けを守った忠臣の者

「熱田サブロウタ」よ、許せ
辛い思いをさせてすまなかった


◇◇ ◇

サンジカネモチはフルベに向かう前、熱田に匿っていたイチキシマ姫の今後について、サブロウタに命じていた。

熱田が攻め込まれたら、イチキシマ姫を敵に渡さぬよう、姫を殺して自害せよと。
サブロウタは命令を実行した。

それから1800年もの間、サブロウタはその罪に震えていた。
魂たちが再生した時、サブロウタはようやくサンジカネモチにその報告ができた。


サンジカネモチはその生を振り返った

◇◇ ◇

「熱田」と「新北」の分裂

これは敵を欺くための戦略
・・・「熱田」に武器は無い
「熱田」の武器はいずこかへ持ち去った
二人の姫を守るために「新北」と取った作戦だった

他のモノノベたちは知らない

全てはこの地を守るため

われはこの地を守るために戦ったのだ
・・・そう信じたい

二人の姫は分かってはくれまいか・・・

二人の姫のことを思うと・・・いまだに体の震えが止まらない


「熱田もののふ」・・この地を代表して戦いに挑んだ・・その名は三師金持

「宗像」三郎昭政はこの地を奪った
・・・「宗像もののべ」は「熱田もののふ」の死を知ってこの地を我が物としたのか
「熱田もののふ」の死に関係しているのか

「香月」実篤三郎太はこの地から去った
・・・「熱田」と「新北」が分裂したと思い込んで

他の多くの「モノノベの者」たちよ
われはそなた等を裏切ったのではない。欺いたのでもない
われのこの思い、分かってはくれまいか・・・


◇◇◇


サンジカネモチは・・・星読は・・・つぶやく

俺は本当にこの地を守ったのだろうか

俺はこの地を守りたい

ただ、それだけの気持ちだった

この地を、他の者に渡したくなかったのだ

俺は本当にこの地を守ったのだろうか・・・

あのときは、
武人として強靭な武器を持ち
その力にうぬぼれたいたのかも知れない

あのときは、
ヤマトタケルを操る後ろの者たちのことなど考えもしなかった

この地を守ることは敵を・・・
目の前の敵を倒すことだと信じていた


もっと広い考えを持つべきであった
もっと広い視野を持つべきであった

なぜ、ヤマトタケルとの話し合いの席に着かなかったのか
いっときの感情に支配された・・・

そうだ!
ミヤズ姫のあの言葉で・・・繰り返されるあの言葉で・・・
冷静さを失っていた

魂の記憶が蘇る
そうだ
あの言葉・・・
「なぜ、タケルは来ぬのか」

われらは一度はヤマトタケルと和議を結んだ
この地の平安を得るための和議を結んだ
大切な「姫」と引き換えに・・・
ところが、その「姫」が悲しんでいる・・・
「なぜ、タケルは来ぬのか」と

ヤマトタケルは神功皇后と頻繁に二人で会っている
夜・・・二人で・・・
そう知らされた

「姫」を差し出したことも腑に落ちない
なぜ、われらの「姫」を大切にしないのだ!
なぜ、われらの「姫」をないがしろにするのだ!

われらの「姫」は幼き頃より活発な御子
このままでは、「姫」は神功皇后の命を奪うやも知れぬ
そのようなことになれば「姫」は確実に返り討ちになる・・・
剣の力は神功皇后には適わないことは明白

「姫」の命を守らねばならぬ
如何なる方法で「姫」を守ればいいのか
俺が代わって皇后の命を・・・いや出来ない
女の命を奪うことなど「もののふ」は出来ない

ならば、ヤマトタケルの命を・・・
これしかない・・・「姫」を悲しませないために・・・
「姫」の命を守るために・・・

われら「熱田もののふ」が手助けするために同行する、と使いを出し
部下を連れてヤマトタケルの軍勢へと向かった

それを信じたヤマトタケルは油断していた
われは真っ先にヤマトタケルに切りかかった
一瞬早く、我が剣がヤマトタケルの鎧を貫いた

しかし、ヤマトタケルが戦いで命を落とすことは想定されていた
すでに身代わりの者は常に訓練されていた・・・
進行を続けるために

短慮であった

ヤマトタケルの命を奪っても
「姫」は・・・「ミヤズ姫」は喜ぶはずもない
短慮であった

ヤマトタケルに戦いを挑んだことで
他の「モノノベ」たちは困惑したに違いない
短慮であった

しかし別の方法は考えられなかった
「姫」を守る方法は・・・
短慮であった


◇◇ ◇

ササンジカネモチの独白は続く

◇◇ ◇

俺はこの地の「モノノベ」たちの力を分散し、弱体化させたのではなかろうか

それは、ヤマトタケルの後ろの者たちの狙いではなかったのか
俺は結局、その者たちの策に乗せられたのか


みなに詫びる


二人の弟と多くの仲間
多くの「モノノベ」の衆に
詫びなければならない

命を奪った「ヤマトタケル」にも

俺のこの思い、分かってはくれまいか・・・

皆、この想い、受け止めてはくれまいか・・・

ただただ、俺はこの地を守りたかったのだ・・・
どうかこの気持ちだけは分かって貰いたい・・・

「もののべ」の衆よ
そなた等を裏切ったのではない。欺いたのではない


この地を守るために
われは今でも、戦っているのだ


身勝手な頼みではあるが
今一度
モノノベの者たちよ、われに力を与えよ
この地を守るために、われに財を与えよ

ふたたび、皆ともに、この地を守ろうぞ!・・・


「もののべ」の衆よ
この思い、受け止めてはくれまいか・・・



<2019.10.22>





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by lunabura | 2019-10-22 19:29 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

綾杉るなのブログ 神社伝承を求めてぶらぶら歩き 『神功皇后伝承を歩く』『ガイアの森』   Since2009.10.25