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ひもろぎ逍遥

<   2020年 03月 ( 27 )   > この月の画像一覧

脇巫女Ⅱ54 仲哀天皇 



それから時が経って、仲哀天皇を呼び出すことにした。

病弱だった仲哀天皇は島根出雲にあった朝廷で即位したという。
それから福岡の香椎宮に遷宮したが、その最期は側近のスクネに毒を盛られたというものだった。

すぐに仲哀天皇が現れて、語り出した。

「これが私の終わり。私のこの世に生を受けた因果。
私は何の意味を持ってこの世に生まれ、時を過ごし、生命を閉じる。
私の生に何の意味があった。
人として生きる中で、何者かの考えですべての事柄が進む。自分の意味とは関係なく、一つのコマのように物事が進んでいく。私の生きる意味は何だった?
未だに分からぬ。

私は長く床に臥せ、考える時間が沢山あった。私の想い描いていた私の世界は、今のこの私を取り巻く周辺とは違った。ふと現実に戻る。身体は言うことを聞かず、意見を問う者もおらぬ。すべては
まるで人形のように、こんな世に生まれたくはなかった。
私は生を恨んだ。周りからは崇め奉られ、当の本人は…。

私は一つ思った。
本を読んだ。輪廻転生というものがあって様々な人生を歩むことを。
次には誰にも頼らずに切り開いてみせよう、誰かの策略には乗らず、自分で切り開こう、そう決めた。

私の名を見てみよ。哀しみしか無い名前だ。その私の名はすべてが現れておるではないか。
何か言いたいことはないのか」

菊如が言った。
「天皇の家系に生まれた方々は皆複雑な背景の中におられ、そこに生まれただけで大変な思いをされていますが、食べる事もままならぬ人生に生まれた者もいます」

「天皇になりたくて生まれたわけではない。
何をするにも一人では出来ず、三、四人がいつもついて歩いた。それが幸せか。
私の自由の時間などはない。
事ある毎に、天皇の意味、この国の長たる姿、心得、そればかり重んじる。自分の心と周りの状況はどんどん、ずれていった。自由に山、海を…いいや海など見たことは無い。この意味が分かるか」

「どういう意味ですか」
「この国に伝わる伝承とは違う」
「駕籠の中にいたのですか」
「私は幼い頃から持病を持ち、身体は強くなかった。私の影武者が三人作られた。私は名前が生きておった。私ではなく、私という名前が大切であった。この国ではそういうこと。
私の名。私という家系が大切だった。

そなたとの話は後に。政治的な流れを聞きたい者がおる」

そう言うと、仲哀天皇は私を見た。
ここからは私が尋ねた。
「あなたの名前を教えてください。本当の名前です」
「私の名は栄天(えいてん)」

「仲哀天皇になられたのですね」
「私はその名は好かん。哀しい、つらい、寂しい、空しいが詰まった名だ」

「慈恩さんではなかったですか」
「慈恩だ。我らの時代は位が進むうちに名前が変わる。慈恩から七歳の時に栄天となった」

「天皇になったのはいくつの時ですか」
「十五の時だ」

「お父さんはどなたですか」
「父親?私の中では父親と共に触れ合ったことはない」

「お父さんは天皇だったのですか。お名前は?」
「神武だ」

「あなたの前の天皇はどなたですか」
「前の天皇は女性と聞いた。私は天皇らしきことは何もしていない。床に臥せってばかりで」

「景行天皇の名前は知っていますか」
「会ったことは無いが、名前は聞いている」

「あなたの一つ前の天皇は女性だということですが、成務天皇ですか」
「女性なのに方々を動き回った。先頭に立って各地を回って行脚したと聞いている。
ある日、次の天皇が私だと知らせが来た。どうにか排除することはできないかと言ったが駄目だった」

「天皇になった時、妃はいたのですか」
「十七歳の年にある女性と知りあった。いや、勝手な縁組よ」

「どなたですか」
「夫婦になった時の名か」

「はい」
「神納(じんのう)。そういう者に興味はなかった。生命が尽きるのを待った。書物で魂は生まれ変わることを知って、早くこの生命が尽き、普通の思いのままに生きていけるように願った。この国にはとらわれず、もっと広い地、狭い国でなくて、生まれ変わりたいと思った。
この国には何の未練もない。恩恵を感じたことも、血筋に捉われたこともない」

この神納という人が神功皇后のことだ。

仲哀天皇自身が言うように、この話は日本の歴史とは全く系譜が違っていた。

歴史では12代景行天皇の子供にヤマトタケルや後の13代成務天皇がいた。ヤマトタケルの子供が14代仲哀天皇だ。ヤマトタケルが若死にしたので、13代は弟の成務天皇が即位したが、成務天皇が死ぬと甥の14代仲哀天皇が即位した。仲哀天皇には妃がいたが、即位して神功皇后を皇后として迎えた。


これに対して、異世界の仲哀天皇は次のように答えた。
仲哀天皇の幼少の名は慈恩。7歳の時に栄天となり、15歳で即位した。17歳の時、神功皇后を后とした。
父は神武。(これが初代神武天皇かどうかは未確認)
仲哀天皇の前の天皇は女性天皇。これが成務天皇の時代に当たる人となろう。

景行天皇は存在しているが、ヴェベル・エンコアがすり替わったかもしれない。
ヤマトタケルはヴェベル・エンコアの子。

経歴を書き変えれば、何となく歴史と対応する印象を受けた。

さて、この後、「脇巫女」がどのように展開するのか、あるいはしないのか、誰も知らない。


<20200331>





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脇巫女Ⅱ54 仲哀天皇 _c0222861_18414040.jpg

by lunabura | 2020-03-31 20:02 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

ほうれん草



ほうれん草


桜がまだまだ五分咲きですが、藤の花も五分咲き!
藤の花はゴールデンウイーク頃に咲く花なのに、一月以上も早く咲き始めました。

昨秋、蒔いたほうれん草や春菊は間引き菜の頃からずっと楽しめましたが、ようやく大人の姿になりました。



ほうれん草_c0222861_1943465.jpg

二つとも茹でて、ほうれん草は鶏皮の揚げたのと一緒に。
それに飽きたら茹で豚と一緒に。
春菊は白和えや吸い物に。

庭から摘んで、気分で決めています。


藤の花を見て、ミニトマトの苗を植えようとしましたが、ほうれん草などはまだまだ片付けるには早いので、一坪菜園はそのままにして、一部を鉢植えにしました。

昨年は晩春が無く、いきなり夏になったので、剪定が遅れてしまい、花芽を切ってしまったものもありました。今年も花と新しい葉芽が一緒で、どうしたものか悩んでいます。

誰だ?るなさん、料理するの?って。
良く聞かれるんですが、三度三度食事を作ってますよ。


<20200330>



ほうれん草_c0222861_15184581.gif

by lunabura | 2020-03-30 19:43 | にっき | Comments(0)

脇巫女Ⅱ53 初代ヤマトタケル5 ミヤズヒメ 




タケルは私を見つめて言った。

「そなたに話がある」
「え?私に?」
私は思わず背筋を伸ばした。

「そなたは最初、こんな青い目をした者へ嫁ぐのは嫌だと言って、あばれまわって拒否したと誰かから聞いた」
――ああ、ミヤズヒメの事だ。私の過去生のミヤズヒメにタケルは話をしているんだ。

「一度そなたと会った。そなたは、船旅はどうだ、港はどうだと、話を聞きたがった。
世界中の話を聞きたがる女人はおらん。航路はどうだ、港の人はどんなだと、一晩中話を聞きたがった」
「あはっ。今の私と同じですね」

――そうだったのか。中東から日本まで、古代の人はどうやって来たのか、私は同じ話を昔も今も聞こうとしていたんだ。

「ああ。神功皇后に興味を持った。会わせろと言った。
毎晩キラキラとした目で、私から世界中のことを聞きたがった。
私とそなたの事はサンジカネモチが取り持った。そこを不思議に思った。
カネモチはあの宮に付いて来た。

私はこの地に留まることはできない。
カネモチは物部との和解の案として妻に、と言ったが、そういうことにはならなかった。そなたは話を聞くために会いたいと言った。
この地を離れると、お互いに辛い。
カネモチは私を良く思っていなかった。

そなたは女の身で学んだことを話していた。水がなくなったらどうした、大雨が降ればどうしたと。
この地に水の湧く壺がある話もした。
そなたは言った。ここを出たい、共に旅をしたいと。
戦に姫を連れて行くことはできん。そういう話をした。

私はヤマトタケルとして、戦をするために作られた人間だ。
心に少しでも淡いものがあるのは、タケルとしては不出来であった。
その頃、病を患った。咳が止まらず、呼吸が出来なくなった。次が準備されているのも分かっていた。
ならば、人として最後に生きることもよかろうかと思った。

カネモチの弟が会いたいと言って来た。私は会うことにした。
そしてまた面白いことに、その者も旅の話を聞きたがった。
その時は敵対関係はなく、人として話をした。
この国の状況、世界の情勢など。
この者も学びたいんだなと思った。

私のしてきたことは何だろうと思った。
今のように嬉しそうに私の話を聞いてくれるのを見ると…。

最後の出陣の日、姫が私をいたく気に入ったと、カネモチが言って来た。
この地に留まっても良いかな、と一瞬思ったが、葛藤があった。
すると、反旗を翻してカネモチが襲ってきた。
私は思いもよらなかった。
裏切られたことに気づいたが、この地では死ぬわけには行かなかった。

私は身を隠す必要があった。
付きの者五人と山の奥へと入っていった。
力が尽きてしまい、鎧を取れ、と言った。
危険だと言われたが、もうよい、私の力が尽きる、これまでだ、と言った。
ここでタケルの命が尽きたと分かれば計画が崩れる。鎧を隠せと命じた。

喉が渇いた。
小川が見えた。そこで血に濡れた手を洗い、水を含んだ。
鉛か鉄のような味がしたが血の味だろうと思った。

付きの者たちと奥へと姿を隠すために入っていった。私が死ねば、この者たちも死ぬ。
私が一日でも長く生きれば、と必死になって杉林の中に辿り着いた。
そこで、
もう良い。お前たちは逃げろ。私がタケルとは誰も知らん。好きに生きろ。そなたたちは逃げろ。亡骸はこの地に埋めろ、
と言った。

小川の水を飲んだからとなっているが、生命は尽きていた。

見晴らしの良い、風の通る竹林に、私は付きの者と眠る。
何の後悔もない。
役目だった。
そして、それがこの地に来た理由だ」

タケルは私に、ミヤズヒメを妻としなかった事情を話してくれた。

「私はいつも立って待ってました」
「ああ、そなたはいかにも、身振り手振りの忙しいおなごだと思った。
人という感情が戻った時間だった。
ヤマトタケルにならなければ他の生き方もあっただろう。
私に従い、敬い、付いてきた者が、私が嘆けば浮かばれぬ。
私はメイを全うした
何も後悔していない」

タケルはそう語ると去っていった。

遠い異国から父に連れられて日本に来て、タケルは戦う人間として育てられた。
その志も半ば、病に侵され始めたが、思いもよらず、生命を落とすことになった。

サンジカネモチは、タケル襲撃の直前に、ミヤズヒメをフルべ物部に預けた。
タケルを殺してクラ―ジュの物部の結束をアピールするつもりだった。
しかし、第二タケルが翌日には発動した。
サンジカネモチの計画は崩れ、フルべ物部たちはタケル側についた。
それに気づかなかったカネモチはフルべ物部の所に行って、襲撃された。
預けたミヤズヒメを連れて逃げようとしたが、タケルの死を知らない姫は、タケルを待つと言って拒否した。
それを聞いたカネモチは感情を押さえられずに姫を斬った。
そして、フルべ物部と戦い、そこで生命を落とした。

こうして、私の夢に馬上の武人として現れたサンジカネモチは死んだ。
さらに夢に出て来た青い目のタケルも死んだ。
そして、ミヤズヒメもこの日、死んだ。

私が見た複数の夢は、魂の仲間たちがここ、鞍手を舞台に生きたことを伝えたかったのだろう。
そして、さらに古い時代に、船に乗ってやって来て、成し遂げられなかった目的があったことを知る事になった。それがウーナの時代だった。

グループソウルは二度、三度と集まって、成し遂げなかった夢を果たそうとしているのだろうか。
まだまだ、この異世界の旅は終わらなさそうだ。

ところで、タケルの話の中に「水の湧く壺」の話が出て来た。
タケルの父が渡来した目的がこの壺を探すことだった。
そして、ミヤズヒメがその壺の事を知っていた。
タケルにその話をしたが、タケルは父に伝えただろうか。

<20200329>






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脇巫女Ⅱ53 初代ヤマトタケル5 ミヤズヒメ _c0222861_18414040.jpg

by lunabura | 2020-03-29 19:51 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ52 初代ヤマトタケル4




私は初代タケルに尋ねた。
「そうすると第二タケルも一緒に育ったんですね」
「ああ。私より若かった。成長している姿を知っている。タケルとして、というよりは、育っていく中で選ばれていくものだ。どういう思いで育っているのかは分からぬが、剣の強い者、神託のある者、風、星を読む者など能力の違いがあり、それぞれの力を伸ばした。
第二タケルは、身なり、話しぶりや目を見て、後継ぎになるだろうと思った。
私があの地を出発した後は知らない。

私は私の任務を果たすだけだ。
神功皇后が来やすいようにお膳立てをする。
勢いのある物部たちを黙らせるのが目的だった。
『お前たちは古い。もっと世界を見よ』と」

「そうすると、壺探しはもうやめたのですか」
「いつの間にか私の中では消えたが、父にとっては主なことであった。遠征していく中で不思議な壺や鏡、剣がこの地に沢山あるのを耳にした。やはり黄金の島だと思った。
地域の者たちが良く知っていた。
私が鎮圧した民には物部よりも楽な暮らしにさせた。私と居た方が生活がいいと思わせるようにした」

――歴史上はヤマトタケルの父は十二代景行天皇ということになっている。それは違うのだろうか。

「あなたのお父さんは天皇だと歴史ではなっているんですが、そうなんですか」
「父はミツヨシと出雲に居て、オサダというより朝廷の方と関わりを持った。
発端はオサダの物部が、クラージュの増長し出した物部を危ぶみ、抑え込まねばならぬと思い、父の壺探しと一致したことからだった」

「ということは、お父さんは天皇ではないという事ですね。間違いないですか」
タケルはいったん肯定したが、直後に意外な言葉を付け加えた。
「もし、刷り替わっていたとしたら?」

――なるほど。わざわざそんな言葉を付け足すということは、それが本当なのだろう。
天皇という言葉を私は使ったが、当時はまだ「大王」という称号しかなかった時代だ。統一国家などはなく、各地に女王や大王がいたに過ぎない。系譜は後付けでどうにでもなる時代だった。ヴェベル・エンコアが天皇とすり替わったとしても、誰にも分からない。

「途中で、ですね」と私は応じて言った。「結局、オサダ・ヒコが勝利を収めたけど、仲哀天皇が病弱だったので、朝廷といっても実質的には動かしていたのはオサダ・ヒコという事ですね」というと、タケルは「仲哀天皇が戦乱の世を動かすことはない」と答えた。

――仲哀天皇は歴史上はヤマトタケルの子となっているが、これも違うと言うのだろう。

私は尋ねた。
「仲哀天皇は何者と聞いていましたか。倭人ですか」
「ああ倭人だ。幼少の頃、床に臥せっている時にしか会ったことはない」

「オサダ・ヒコが実際は朝廷を動かしていたのですね。代々世襲でしたか。その時代はミツヨシとかオサダ・ヒコ・ミツヨシとかいう名で」
「ああ。世襲だ」

「結局、物部は島根出雲とクラージュに分かれていて、これは実質、物部同士が戦う物語なのですね」
と私は結論づけて言った。

ここで琴音とバトンタッチした。

琴音が聞いた。
「ミツヨシは何代目でしたか」
「私はその頃、オサダ・ヒコは何代あるかは知らなかった。タケルから後に聞いた。三代目と聞いた」

――三代目か…。意外に近いな。
 
それというのもワダツミの神を封印した物部氏の名にオサダ・ヒコの名が別の日に上がって来たのだ。「脇巫女」の時代が三代目だとすると、初代が活躍したのはわずか数十年程度前の話になる。

「ワダツミ」の時代が分からず、いくつか問題を抱えていたが、オサダ・ヒコを基準とすると、「ワダツミ」と「脇巫女」の時代は二~三世代しか差がないことになる。
 この話をタケルが知っているかどうかは分からないが、一応尋ねてみることにした。

「オサダ・ヒコとワダツミの戦いみたいなものは聞いたことがありますか」
「同じような力を持ったものが封印したと聞いた。神をも敵に回すとは。
神をも封印できる者たちがいることを初めて知った。
あの頃は海が荒れていた。仲間を失うことは多かった。
ワダツミには二面性があった。荒ぶる顔と穏やかな顔とを持っていた。
海は脅威だった。
当然、ワダツミは言う事を聞かぬ神だから、操るにはどうしたら良いか。人間が考えることは、ワダツミの娘を自分の妻として迎えることか、あるいは浅はかな考えで封印することか、だ。
私は興味はない」

「ミツヨシはワダツミを封印していないのですね」
「していない」

「初代オサダ・ヒコが封印したことは?」
「知らない」

話が終わると、タケルは私をじっと見た。

<20200328>





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by lunabura | 2020-03-28 20:29 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ51 初代ヤマトタケル3 タケルらを輩出した組織とは



ヤマトタケルは初代から七代までいるという。
スクネも何世代かいる。
初代タケルが死ぬと、即座に二代タケルが動き出した。

明らかに彼らを集めて育てている軍事組織が存在する。
いったい誰がそんな組織を創ったのか。
また、完璧なタイミングで入れ替えをするように指図をする者は誰か。
そんな疑問が湧くようになった。

星読の語りでは、クラ―ジュ(鞍手町)にいたクマソの星の民、月の民のうち、月の民は木月(きつき)にいて、子供たちを養育していた。女子は巫女に育て、男子は守護兵に育てたという。

そこに進軍してきたのがヤマトタケルたちだ。
いったい何処から来たのか。
そう考えているうちに、オサダヒコの存在が気になってきた。
何か絡んでいる。

この辺りを調べるには、誰が良いか。
確実な人物として、初代ヤマトタケルが適当と思われた。

私は初代タケルを再び呼び出してもらうことにした。
前回から一週間後の2020年1月18日のことだった。

タケルはすぐに現れた。私は挨拶もせずに、ダイレクトに尋ねた。

「タケルさんの本当の名前を教えてください。生まれた時に付けられた名前です」
「サマール・エンコア」

「何処で生まれたのですか?アフリカですか。ヨーロッパですか。地域の名前は何ですか」
「私が生まれた所はエジプトの上の方の村」

「トルコ辺りですか」
「そう。父と、どちらかといえば、海の上の暮らしが多かった。海賊のような、海の上で」

「お父さんの名前は何というんですか」
「私の父は青い目はしていなかった。父はその時の名はヴェベル・エンコア」

「お父さんも船乗りだったのですか」
「ああ。大きな男達と共に。私は父が使命を抱えているとは思わず、海賊のようだと思っていた。父には使命が一つあった」

「使命とは?」
「遠い昔より語り継がれている壺を探すこと。黄金の国にある。それがどこの国かは分からない。それで旅をしてこの国に来た。港に立ち寄ると耳にした黄金の国。小さな島に壺はあると聞いた。その島を見つけて父は降り立った。港の出入りは自由だったが、地域を治めている者に会わなくてはならなかった。私たちが着いたのは今の出雲という国だった」

「その出雲とは九州の出雲ですか、それとも島根県の出雲ですか」
「砂漠がある、先っぽ」

「島根県ですね」
「その地域というのは今の物部が治めていた。領地は大きくないが。
私が父に手を引かれて会った人物はオサダ・ヒコと言った。オサダ・ヒコ・ミツヨシ。光喜。その者は六人の部下を連れ、異国から来た私たちを迎えてくれた。

父が『我々がこの地に来た目的は、壺を探すことだ。それは黄金の島にあると聞いた。その壺はいつでも水が湧くという壺だ。現実にあるのか探しに来た』と言うと、ミツヨシからある提案があった。表立ってでは探せない。裏でうごめく組織を使おう。その壺を持てば島国を治められると」

「ミツヨシは壺を持っているんですか」
「いや、海を渡った、ここより小さな島にあると聞いた。物部が牛耳る地域がある。その物部は地域に根付いており、外からの者を受け入れない。ミツヨシ軍が鎮圧されたことがある」
――小さな島で物部が牛耳るというなら、クラ―ジュ(鞍手)のことだ。

「それって、物部同士の戦いですか」
「ああ、物部同士が戦っているという話を聞いた。
勢力を広げるためには戦か、話し合いが良いか、父とミツヨシが話し合った。戦というのは経験をしたほど強い。しかしここはそれとは程遠い戦いをしていた。戦いのことは、父は熟知していた。制圧する戦い方をミツヨシに話した。
ミツヨシは自分の計画を父に話した。ミツヨシは壺などどうでもよかった。クラ―ジュで力をつけた物部を分散させたかった。
九州物部が一つになり、こちらを制圧することへの恐れを朝廷は持っていた。ミツヨシは朝廷と組んでいた。九州の勢力を衰えさせるためにミツヨシは父と組んだ。壺はどうでもよかった。二人の利害が一致した。

父の計らいで組織を作ることになった。
島国には不思議な力を持った者が多いと聞いた。
それを集めて教育することにした。
大きくなった子供では要らぬ考えが働く。個性とかまだ持たぬ子供たちを集めた。
その子供たちに、この国を一つにするため、戦を無くすために、平和に暮らせるための組織だと教えた。子供たちは素直で、努力家で、すんなり受け入れた。親たちには少々の金品をやれば喜んで預けた。

父が集めた子供たちに言った。
 自分の力を磨くこと、メイに従う事、感情を持てば自分で自分を追い込む。
この国のために尽くさないかと。
子供の目がキラキラした。朝廷の命とは!大きい、嬉しい、誇らしいことだと。

こうして子供が集められて訓練された。普通の子と違う考えを持ち、成し得る最良の暮らしをもたらし、国を楽にすることに異存はなかった。自分もそこにいた。

私の第一陣が始まった。
父からの戦法はこうだ。

この国は長(おさ)が前に出て戦う。それはならぬ。一番前に出て来た長を取れば終わりだった。我らの戦い方に、島国の物部は驚いたようだった。主は最期に出るのだから。
窮地に追い込まれても平常を装うように。主が平静でいれば、必ず道が開けると教わった。

私に付けられた名がヤマトタケル。
ヤマトタケルになる。スクネになる。それぞれの役割に沿って教育された。
ミツヨシは喜んだ、新しい風が吹く、と。
壺はどうでも良くなった。
いつのまにか私は洗脳にひっかかり、一緒に成長した者とこの国を一つに出来たら、と思うようになった。
この国には初めての戦い方と軍隊で。

西に侵攻し、いろんな地域の者たちを仲間にしていった。敵がすぐ刀を抜いてやって来たら、それを殺せば、軍勢はどうしたらいいか分からぬようになる。そういう敵には主を入れ替えた。

鎮圧するつもりなない。その国を治めたいわけではない。
話をするのはスクネ。タケルは見るだけ。私は戦いは好きではなかった。
私の甘さがそこかもしれない。
あそこに集められて育てられると沢山の愛情を受けた。友情、人との関わりを学んだ。そこが私の命を終わらせた一つの要因となったかもしれない。
あの時は本当に国を一つにできると、戦わずにできる、と思った。

西のこの島に渡った。
物部はすぐに戦って来ようとはしなかった。まず話がしたいと言った、こちらもそれを望んだ。

西の都に入った時、道すがらに、やる策があった。あくまでもこの侵攻は外から見れば鎮圧と支配と恐怖をもたらすものだ。だが、それをする訳にはいかない。必ず反乱が起きる。仲間を作っていくのが最良だった。

そこで表看板になったのが神功皇后。本人の意志とは関係なく話は出来上がっていった。スクネの敷いたレールに神功皇后が乗ってやってくる。スクネの後を神功がやってくる。そうやって、このクラ―ジュに辿り着いた。
これが、この地に生き、わが生命を落とすまでの一連の流れだ」

初代タケルは包み隠さずに語った。

タケルの名はサマール・エンコアだった。父の名はヴェベル・エンコア。
父は「水の湧く壺」を探して船に乗って黄金の国日本までやってきた。上陸したのは日本海側の出雲だった。その出雲には朝廷があり、物部氏のオサダ・ヒコが実質的に治めていた。オサダ・ヒコはクラ―ジュの物部氏と対立していて、いつか攻め込まれるという恐怖を抱いていた。話し合った結果、オサダ・ヒコが「水の湧く壺」探しに協力する対価として、ヴェベル・エンコアは軍事組織を作ることになった。
 子供たちは「戦の無い平和な世の中を作るため」という名目で教育され、サマール・エンコアもその一員として育てられた。そして初代ヤマトタケルとなってクラ―ジュにやって来た。

そういう流れだった。
そうすると、第二タケルも同時に教育されたのだろうか。


<20200327>





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by lunabura | 2020-03-27 19:47 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ50 アルゴラの王妃5 セオリツの行方



菊如が王妃に尋ねた。
「あなたは一度クラージュに来られましたよね。誰かの埋葬があった時。何のために来られたのですか」
「クラージュにいた、同じような力を持った者の葬儀に参列するためです」

私は尋ねた。
「誰の葬儀ですか」
「その時の葬儀は木月の、星を読む大年寄りが亡くなったと聞いて行きました。サガミと言っていました。みんなはオオバアと呼んでいました」

「何故その方の葬儀に行ったのですか」
「オオバアの目が閉じぬ。これは何かある、ということで呼ばれました」

「何か分かりましたか」
「目に手を当てて話を聞いてやると、静かに目を閉じました」

「どんな話をしたんですか」
「オオバアは、この話は誰にも言えぬ。しかしあの世に持っていけば誰かに話せなくなる。そうしたら、この子は身無し子になる、と言って私に託されました」

「それがセオリツですか」
王妃は返事を躊躇した。私は続けた。
「私たちはその名前をセオリツと知っているんですけど」

王妃は観念して言った。
「私が連れて帰りました」

私は尋ねた。
「そして何処に?」
「今の貴船に行きました。のちに巫女になる子が育っていた所です。その中の一人として、何も知らず、何処で生まれたか、誰の子か、いずれその時が来たら」

「のちに神功皇后が来たではありませんか。会わせましたか」
「お互いに何も知らずに。サガミとの約束でした。神功皇后は頭を撫でていました」

「名を伏せて対面させたのですね」
「ええ」

「もう、お互いの事を知らせてもよかったのではないですか」
「まだ戦乱の世。あの子が神功皇后の子と言えば、戦に連れていったでしょう。あの子にはあの子の人生があるのです。あの子の選ぶべき」

「セオリツは出雲の貴船神社の所で、ヒイラギの後を継いだのですか」

王妃が答える前に菊如が尋ねた。
「ひょっとしてですね。八大龍王神社がありますが、あそこに祀られているのではないですか。セオリツの亡骸はそこに埋められていますか。気のせいですか。
雨乞いの儀式もそこでしていたんですか。あなたのお蔭ですね」

「そこまで分かるんですか。大きな池が昔はありました。セオリツはそこで雨乞いをしました。あの子のまわりには龍神が。龍神は水を使います。水がすべての始まりです。水で浄め、龍神が味方をしました。その場所で何も知らずに、神々と共に育ちました」

私は話を戻してもう一度尋ねた。
「セオリツはヒイラギの後を継ぎましたか」
「後継ぎにはなりませんでした。もっと大きな力が働き、巫女とは違う存在に」

菊如が言った。
「セオリツの後ろに八体の龍が」
王妃は答えた。
「我々とは違う、この地を守るための役目です。壺に水を張り、神託を受けた時、『そこから別の宮に移せ、八体の龍と共に』とあって、あの地に移しました。
その頃、セオリツの年は14。八体の龍がいれば私も安心でした」

すでに、かなり時間が経っていた。情報が多すぎて整理する必要が出て来た。
私たちは、いったん終了することにした。
「ありがとうございました」
と言うと、王妃は去って行った。

アルゴラはとにかく水の問題が深刻だったと崋山が言った。

最後に出て来た八大龍王神社は出雲の南の方にある。入り口は狭い道路で、奥に神社があるとは分からない。

そこでセオリツは雨乞いをしたらしい。ヒイラギとは違う大きな力を持った巫女になった。

ここまでの話を整理してみよう。

セオリツはクラ―ジュの木月宮で巫女サガミ(オオバア)に育てられていたが、サガミが死んだ時、目を閉じなかったので、アルゴアから王妃が呼ばれて、セオリツの秘密を聞いた。王妃はセオリツを引き取ってアルゴアに連れて帰った。

王妃が亡くなった時、神功皇后がアルゴラに来て、ヒイラギが王妃の力を受け継ぐのをたすけた。
ヒイラギはヌタ(大国主)との間にイヨという娘を儲けた。イヨが成長した頃、魏が黄金を狙って、嫁取りの話をして来たが、これを断った。イヨは神功皇后に政治的解決を頼んだ。
ヒイラギは貴船で、神功皇后が再びアルゴアに来るのを待った。そして、魏と交渉してもらった結果、黄金と鉄を対等交換することになった。

神功皇后がセオリツを我が子と知らずに対面したのはいつだろうか。
王妃が死んだ時か、魏の件があった時かになろう。

セオリツは14歳になった時、神託が降りて八大龍王神社の所に移った。

マナの壺については、ヒイラギに伝えられた。ヒイラギが次の巫女に伝えたかもしれないが、別の者に奪われたかもしれない。あるいはセオリツが受け継いだか。

必要ならおいおいと分かるのだろう。


<20200326>





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by lunabura | 2020-03-26 20:02 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

4月16日のバスハイクも延期します



4月のバスハイクは「ディープな宗像の聖地巡り」でしたが、これもまた延期します。

これで2月3月4月と延期になりますが、再び笑顔で会える日まで待ちましょうね。



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by lunabura | 2020-03-26 14:25 | バスハイク | Comments(0)

脇巫女Ⅱ49 アルゴラの王妃4 マナの壺は何処に?



昨夜、偶然にも、アルゴラの舞台となった嘉麻郡(かまぐん)の王塚古墳がNHKの古墳の番組に出ていた。見た人は、あの赤く塗られた石室のことだ。

以下は過去記事。



この古墳のさらに地下の部分に王妃が埋葬されていたという。







脇巫女Ⅱ49 アルゴラの王妃4 マナの壺は何処に?_c0222861_21221377.jpg

この南に出雲があり、貴船神社が鎮座する。そこが巫女たちが教育されていた場所で、ヒイラギもそこで育った。

さらに南にホウケントウ古墳がある。前方後円墳だが、やはりその地下部分に王妃の魂だけが移されたという。考古学的には、ここからは弥生土器も出土しているという。

王妃の話に戻そう。

王妃は語った。
「遠い昔、今のように神が人間から遠くない時代、近い時代に、当たり前のように水が湧いたり、未来が見えたりすることは普通のことでした、星や月が語り掛けるのも当たり前でした。だんだんとそれを封印していったのです。そなたたちが探しているものはマナの壺ですか」

「はい」
「マナの壺はシナイの山にあります」

??王妃の手元に来たはずだ。もうシナイ山には無いのでは?

「シナイの山はご存知で?どういう風に聞かされております?」
「恐ろしい神が住む所。地の底より恐ろしい神が現れる場所だと」

「そこにあったマナの壺があなたの手元に来たと考えられるんですよ。
マナの壺は、遺体が埋葬された場所にあるという事ですね?」

「いや、今はもう無い。それで、行方を探しているのですね」

――今は王塚古墳にないなら、ヒイラギに渡したのか?

「あなたが最期に死んだ時、ヒイラギに預けましたか」
「もちろん、私の力と共にヒイラギに渡しましたよ」

「ヒイラギはその後、ずっと使ったんですよね」
「…」

「あなたの魂が埋められた場所(ホウケントウ)に埋めたのですか」
「代々の巫女はあの地に埋められました」

「ヒイラギは何処に埋められたのですか」
「代々の巫女はあの地に埋められます」

――王妃は答えを巫女の話にすり替えた。私の質問はマナの壺をホウケントウに埋めたかどうかなのだ。拒否のエネルギーを感じた。どうやって答えを引き出しそうか。

この時、菊如が「王塚古墳にはないような気がする」と言った。崋山も無いと手で答えた。

――ヒイラギが死んだあと、代々の巫女がホウケントウに埋められたなら、そこに黄金の壺も埋められているということになるのではないか。しかし、王妃の答えは曖昧だった。明らかにはぐらかしていた。

「あなたのお話では、あなたの魂を入れた青い壺と黄金の壺は一緒にあるという事になるんですけど、そうですか」
「…」

「もしかしたら、あの黄金の壺はマナの壺ではないということですか?」
「…」


答えないつもりだ。方向を変えて質問をすることにした。
「黄金の壺の使い道はどうして分かったんですか」
「水を張って満月に映します。すると、交信ができました」
菊如が「それは御神託で分かったんですね」と付け加えた。
私は
「それは若返りではく、実際には交信が出来る水だったのですね」と確認した。

――水沼族は月の光を水に映して変若水を作っていたが、それとは違っていた。


菊如が王妃に尋ねた。
「あなたはあのホウケントウ遺跡には霊体の亡骸として来ましたか。遺体は王塚古墳から移動したのですか。」
「青い壺の中に我が魂が封じられて運ばれました」

「遺体は王塚古墳の下に残っているんですね」
「ええ。いつか蘇りし時のために。蘇るためにあの側で」

私は尋ねた。
「あなたは既に転生したのではないですか」
「まだ、準備が整っておりません。すべての者が揃いし時、その時が来るまで」

「それは今ではないのですか」
「今ですが、今ではありません。それをどうこう出来るのは先々、3年後か、5年後か、100年後か。この流れの進み具合で。でも本当は転生が無くなるのが一番ですが。
何かに委ね、生きることは良くないのですが。あの時は仕方がありませんでした。知恵がありませんでした。今は一人一人、立ち上がれる時代になっているではありませんか。神々は必要な時動きます。必要のない時は動きません」

「でもですね。五人の内の一人は、もう転生して待っているんですけど」
「準備が整えば」

「準備というのは、私たちの方ですか、それともそちらの方ですか」
「こちらの準備が整えば、彼も動き出します。まだまだ荒れた時代、国がひっくり返るような事が起きます」


ここで菊如が私に「王塚古墳と地下とは全然時代が違うんですか」と尋ねた。
「300年ぐらい違う」と答えてから、私は王妃に尋ねた。

「王塚古墳といって、あなたの御墓の上に、大きな古墳が出来たんですけど、それを見てあります?ご存知ですか」
「ええ。私を隠すように。物部が一帯を守りました。私は譲るしかなかったのです」

――王塚古墳の成立は磐井の乱の時代に重なっている。ここが物部氏なら麁鹿火(あらかひ)ではないか。

「その古墳に埋葬されているのは物部麁鹿火ですか」
「いいえ。あの一帯を治めた者。のちに守った者です」

――名前が伝わらない物部氏がここの長になったようだった。


王妃は「国がひっくり返るような事が起きます」と言った。これを聞いた昨年の12月には想像もつかなかったが、これが今の状況だったのだろうか。


<20200325>






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脇巫女Ⅱ49 アルゴラの王妃4 マナの壺は何処に?_c0222861_18414040.jpg

by lunabura | 2020-03-25 21:23 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ48 アルゴラの王妃3 「マナの壺」と「マナイの壺」



「黄金の壺について教えていただけますか」

「雲を起こす壺です。水を張り、三日三晩祈ると、その水は未来を映し出します。
それで未来を見ていました。
時代の流れを見ていくのです。
その力を借りに来る者もいましたが、本当にこの日本の事を思い、民のために武器を持たずに来る人だけに会いました。

色んな国の人が来ました。
ある時、金の壺を探しているものたちがガタガタの船でやっとの思いでやって来ました。
私が儀式に使う壺を欲しいと。
何に使いたいのか尋ねると、自分たちの土地には水が無いので欲しいと。
この壺を渡すことはできないが、その者たちには代わりに私が使っていた金の皿を渡しました。
これに一滴、水を垂らすと水が湧き、祈りを三日三晩して土に埋めるとそこから泉が湧き出します。その皿を持たせました。
私が一度やってみせました。
これを見て私に賛同した者がこの地に留まりました。そして、共に来た者たちに金の皿を持たせて帰らせました。
この時、残った五人が共に埋葬されたのです。

この地のために。この世で困った者たちのために。
旱魃、日照り、雨が多い、そんな問題が起き、どうにか人が暮らせる地にならぬか、そういった問題に応え、その地に合った生き方を教えると帰って行きました。
かわりにこの地では採れないものと交換しました。鏡を置いて行く者もいました。

とても交流がありました。海外の者たちと集う場所というのは過言ではありません」


「その黄金の壺はどうやって手に入ったのですか」
「遠い昔、東の方より持ち込んだ者がいました。大きな地震があり、多くの者たちが死にました。
ある男がその壺を抱えたままま村の入り口に倒れていました。命からがら逃げてきた、と語り継がれています」

「その話は何百年も前の話ですか」
「ええ」

「マナの壺という壺のことは聞いたことがありますか。その事ですか」
「それが代々受け継がれています。守らねばなりません。私が預かるのが一番。マナの壺を持って倒れていた男から受け継ぎました」

菊如が尋ねた。
「それはもう一つセットで何か無いですか」
「もう一つの壺?一つしか伝わっていません。二つあるのですか。私が持っていたのは一つです」

――地震があって、男が持ち込んだというなら、それはカミラではないか。ウーナの時代の男だ。シナイ山の麓に隠されていた壺をカミラは地震の後、手に入れたのではないか、そんな疑問が湧いた。私は話を戻した。

「壺を持っていた男の名前は伝わっていますか」
「行きずりのボロボロの服で、かっぷくの良い男。こちらの者ではない見たことのない男だったと聞いています」

「カミラという名とか、アミラカミラとか、聞いたことはないですか」
「ああ、その男が最期に語った言葉がカミラかアミラか、呪文のように唱えていたと。
壺はこの地で手に入るようなものではありません。装飾がありました。元は赤か茶のような色の文字が書かれていました」

「黄金だけど、赤か茶色で文字か書かれていたということですか」
「ええ」
――やはり、カミラだ。ウーナの時代、ガードゥがエジプトで発見し、それを日本に持ち込んだ。シナイ山の麓に封印されていて、カミラとアミラが合わせ鏡で取り出すはずだったが失敗したと言っていた。
しかし、地震の後、カミラは成し遂げていた?

ここで菊如が尋ねた。
「マナイの壺というのは聞いたことがないですか?水が湧くという壺」
「聞いたことがあります。マナイの壺とマナの壺は違います。八所宮にあるのはマナイの壺です」

「そうですか。ひょっとして宗像の八所宮の真名井の池かと思いまして。あそこの地域は稲が枯れたことば無いと。そこで、ひょっとして、かな、と思ったんですが。それは知りませんか?
宗像の吉留は元々は海でしたが、旱魃も無かったと聞いておりましたので、ひょっとして真名井の池にマナイの壺があるのかなと、ただ思いまして。それとは違うんですね。別ですね」
「マナイは知りません。似た名前なんですね。あの時代の水は大事でした。真水が湧くというのはとても大事なことでした」

――これを聞いていて、私たちは壺について混同していたのを理解した。
壺には「マナの壺」と「マナイの壺」の二つがあったのだ。
ガードゥが持ち込んだのはマナの壺だ。カミラによってアルゴラの王妃に伝わった。
マナイの壺はその由来は分からないが、水の湧く壺で宗像市の八所宮の真名井の池にある。

かつて、ガードゥらの航海の時に、水はどうしたのかと尋ねたら水の湧く壺があると言っていた。
食べ物の湧く壺もあるらしい。

ドゥックらがエジプトから水の湧く壺の噂を聞いてはるばると桂川町にあるアルゴアまでやって来た。そしてアルゴアで見たのは黄金の壺で、王妃が持っていた。ドゥック等は探していた壺と王妃の持つ黄金の壺と勘違いしたのかもしれない。
王妃の持つ黄金の壺は「雲を呼ぶ壺」だと言っていた。そして「未来を映す壺」だと。

整理すると、
マナの壺:雲を呼び、未来を映す壺 エジプト→ガードゥ→日本のシナイ山→カミラ→アルゴアの王妃  
マナイの壺:水が湧く壺   ? → 八所宮        

そうすると、王妃が死んだあと、マナの壺は何処にいったのか。王妃はヒイラギに伝世したはずだ。ヒイラギが「金と月の光と水で祭祀をした」というのはこれだろう。
ヒイラギが死んだあと、その壺はどうなったのか。



<20200324>







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脇巫女Ⅱ48 アルゴラの王妃3 「マナの壺」と「マナイの壺」_c0222861_18414040.jpg

by lunabura | 2020-03-24 20:12 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

脇巫女Ⅱ47 アルゴラの王妃2 その名はオオビラージュ



神功皇后は兵を連れず、一人で私の亡骸(なきがら)の側に立ちました。

それを私は上から見ていました。
ヒイラギに受け継がれた私の力は神功皇后の前で発動しました。

私の亡骸は何処に行ったか。
私の遺体を埋葬する場所は決まっていました。それが王塚古墳の地下です。
地下に穴を掘り、遺体を守る呪術師五人と共に地下に入りました。
その時、私は言いました。

..ヒイラギがそなたの耳にこそっと話したものを覚えていますか。

10日もすれば兵達はいなくなる。
さすれば我を移してくれ。
この地は私の眠る地ではない。
力を受け継がせれば普通の女性。
遺体はそのままで、あの場所へと。

力を受け継いだヒイラギは十日間、神功皇后と共に遺体のそばに立ち、十日後に我が魂を取り出し、自分に憑依させたままあの場所へと遷したのです。
あの薄い青い壺に我が魂を入れて、あの地に埋葬しました。

青い壺はその内に出てくるでしょう。

五人の呪術師は私が蘇る日を共に待つためにたたずんでいます。
その内、私の魂は戻るでしょう。
転生し、あの者たちと共にまたあの地に。
天の神、地の神の拠り所となるように。
あの者たちは私たちを待っています。その時が来るまで。

力を持つということは、切ない事ですね。
女性でありながら、女性として生きられぬ。
その思いは女同士でしか分からぬ。
ただ自分を慕う者たちが、自分を神と崇める者たちが・・・

我が遺体は王塚古墳の下にあります。魂は青い壺と共にあの場所へ。

その時はまたいずれやってきます。
私の後は神功皇后があの地を守り、あの地に特別な力が及ばぬように、計らいをしてくれました」

――王妃は問わず語りで、亡骸と魂が別の所にあることを教えた。
ヒイラギは王妃の力を受け継ぎ、神功皇后の力を借りてその力を発動することが出来た。
そして王妃の魂を別の遺跡の所に移した。青い壺に入れて埋葬した。
今はその遺跡の上にも前方後円墳が出来ている。



菊如が尋ねた。
「一つ聞いても宜しいですか。あなたが頭に乗せていた銀色の冠は鞍手にありますね。
必要な物は鞍手に集められています。銀の王冠は見つかっておりますよ」
「そうですか」

「それは持ち帰っております」
「ありがとうございます。またそれを使う時が。いずれまた。
さまざまなものが蘇り、今この時、神々は必要のないことはしません。
今、心して輪廻転生した者はこの地に集いますが、決して良い事だけではありません。危険が及ぶこともあります。人々はそれを心して掛からねばなりません。
今一度、立ち上がらねばなりません。
人々はその心を持っています。
力で収めるのではなく、心に魂のカケラを持っています。そのカケラを思い出すのです」


「あなたは一度、クラ―ジュに来たことがありますね。私と話をしたことが一度ありますよね」
「ええ。争わない、戦わない、そういう世の中でありますように。切に願います。
あの時代は叶いませんでしたが、今なら実現できるかもしれません。力で収める時代は終わりました。世の中が変わっています。人々の心は求めています。平穏で戦はなく、譲り合い、補い合う。
戦いではくたびれ果て、何も変わらない。人間は思い始めています。
神々を信じる時代が始まります」

「元に、あの頃に戻るだけですね」
「あなたも同じでしたよね。沢山の者たちの死を見て、屍(しかばね)の一人一人に物語があり、愛する人がいて、家族がいて、一つの使命の為に沢山の者たちが犠牲になり、生命を失う光景を見てきました。
その果てに何があるでしょうか。幸せでしたか。何かを成し遂げましたか。
何をしたかったのですか。
何か得たものはありましたか。
人の犠牲の上に成り立つ幸せなどあるのでしょうか。
一つの成就のため、何千何万の人が犠牲になればいいのでしょうか」

「あなたのような方は今後転生され、そして女性性の時代になって変わってくのかもしれませんね」
「そうでしょうね。男性が上だと争い事は起こりますが、母なる女性の時代がやって来ます。
男性は女性を守るべきです。
戦うとは武力で、ではありません。
戦う時代は終わりました。
私は魂のカケラを持っているものたちの心の種が芽吹いて来ると思います。
あなたも同じ苦しみを抱えていたではありませんか。
男達が戦いに勝ち、酒を飲み、喜び合って、心が擦り切れ、すりきれ、すりきれ、
分からなくなっていったではありませんか。
戦いからは何も生まれません。
犠牲は美しくありません」


そんな話しをしたあと、私に「聞きたい事は何ですか」と尋ねて来た。
私は尋ねた。
「お名前は何ですか。オホヒメと呼ばれていた方ですか」
「ええ」

「本当のお名前は」
「本当の名はオオビラージュです。大雅羅如と書きます」

アルゴラの王妃の名はオオビラージュだった。
その名がオオヒメ、オホヒメ、あるいは王妃となったようだ。

私は王塚古墳での話を思い出していた。
ドゥックたちはエジプトから黄金の壺を求めてやってきた。ところが王妃が黄金の壺を自分達の想像以上に使いこなすのを見て敬服してここに残ったと言っていた。それについて知りたかった。


 つづく
<20200323>





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by lunabura | 2020-03-23 20:24 | 「脇巫女Ⅱ」 | Comments(0)

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